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■■■ ボディー形状の疑問と考察(コアのレイヤ構造) ■■■

 ワンピースということも考えられないわけでは無いが、世間一般的に2ピースと言われており、かつネックポケットと命名したネックが収まる部分(図1-A部)や、トップパネル開口部分の段差(スイッチプレート固定のための段?強度確保?:図1-B部)など、また加工のし易さといった点からもメインコアはやはり2ピースであろう、と結論付けた。しかし相変わらずZ軸方向は問題で、2コアの合わせ面の寸法が全く分からなかった。そこで以下の条件から合わせ面はボディー厚さの中間(図2)とすることにした。


【図1】

【図2】




 レッドスペシャルはよくよく観察すると、テールエンドのストラップピンの両サイドに孔が開いている。これは何ぞや?と考えた。そしてそれは「トレモロのテンション調整用のボルトを回すためのロングな貫通孔(アクセスホールと命名:図3/4)であると判断した。


【図3】

【図4】



 フローティングアームのテンションは、一般的なシンクロナイズド・トレモロ(ストラト)の場合、ボディー裏のスプリング数で調整する。レッドスペシャルの場合は、スプリングを抑えているボルト(パンサーのバルブスプリングね)を締めて調整する。つまりボルトを回せなければ調整が出来ないのである。当初スプリング力の調整は六角ボルトの頭をラジオペンチとかでまわすのかなぁ?と思っていた。が、このアクセスホールの存在を見つけてから、長いツールをこの孔から差込み、ボルトの頭(十字かマイナスか六角レンチかは分からない)を回すということが分かった。これはいかにも工学的なやり方で、「ブライアンだなぁ」と関心したのだった。

 そしてそのアクセスホールは5mm程度の径で100mm程度の長さが必要だ。ボディーコアを貼りあわせた後、ボルトが位置する場所に正確に孔を貫通させるのは非常に難しいだろう(ブライアンなら出来るのかも)。なので、張り合わせる前に事前に溝を切ってあるのではないか?(図6)。そうだとすれば、ボディー貼りあわせ面が筒孔のセンターに無ければ加工が出来ない。ということで、めでたく、コア貼りあわせ部 - アクセスホール - トレモロスプリングZ方向位置 が決まったのだった。やった! そしてこのアクセスホールの位置が決まることにより、「Arm Base」や「Body Base」などの孔位置が決まるのである。


【図5】

【図6】



【2009年1月3日追記】
 ネットで知り合いになったからから指摘があった。この指摘はいままで「う〜ん、本当にこういう形状なのかなぁ?写真は違うように見えるけど・・・」と思っていたことをまさに突いてくれた。やばいなぁと思っていたことは大体やばくなるものである。さてそれはどこか? このトレモロのチャンバーである。表面開口のまま下まで貫通だと思っていた。が、それが違うようだ。内部は表面開口部より広くなっているようだ。そうであればアクセスホールも短くて済み、多少ズレがあってもOKである。

 フライヤーさんのレストア写真でも、このトレモロチャンバーが開口しているものがあった。そしてそれは、どう見ても表面開口部より内部が広く見えるのでる。しかし「目の錯覚だ、光の回り方でそう見えてしまうんだ・・・」と自分を納得させていた。やはりまだまだ修行が足りないのである。近々修正しなくては・・・




■■■ ボディーコアのチャンバー形状(向かって右側)の疑問と考察 ■■■

 ちょっと前までボディー右側のチャンバーは下コアから上コアまで同じ形状で貫通しているものと思っていた。が、これもフライヤーさんのレストア写真で自信が揺らいできた。この部分は導電塗料が塗られており黒くなっている。そのために、エッジ形状が非常に分かりにくい。F1フェラーリがボディー下部形状を分からなくするために、ボディー下部をわざと汚い感じに黒塗装したのを思い出した。黒形状はシェイプを分かりにくくするのである。しかし256階調の1階調を読み取るべく、画像を凝視しまくり貫通形状ではないという結果になった。具体的には下コアの一部が段として残っている、ということである。画像を凝視して分かったということもあるが、SWプレートを介してスライドSWが取り付けられている画像をみつけたとき、そのプレートがボディーにネジ止めされているのがわかり、それは下コアのどこかということになったからである。


【図7】

【図8】






■■■ スイッチプレートの高さ関係とスライドSWの取り付けの考察 ■■■

 レッドスペシャルのピックガード表面にはスライドSWの留めスクリューが出ていない。なので内部で何らかの処理がされているものとは推測が出来た。そんな時フライヤーさんの写真からスイッチプレートの存在が分かった。さてここからが問題である。スイッチプレートなのはいい。で何が問題かといえば・・・

・スイッチプレートの下にスライドSWを設置
・スイッチプレートのSW用ネジ止め孔は上側で面取って、皿ネジでスイッチを締結
・するとスイッチプレートの厚さ分、スライドSWのノブがピックガードから下がってしまう
・ピックガードは3mm厚なので、もともとスイッチノブが出にくいとことに、さらに追い討ちをかけてノブが沈み込んでしまう

なのである。


【図9】

 しかし、Old Ladyを見てみるとそれほどスイッチノブが沈み込んでいる風に見えない。なぜか?ここで大いに悩んだ。そんなとき楽器屋で「ブライアン・メイ本」を見た瞬間、「あっ」と声を上げるべくすべてが分かった。「なんだ、スライドSWはスイッチプレートの”上”に取り付いているんじゃん。」である。こうすれば、ピックガードに直接スライドSWを取り付けたのと同じ高さ関係だ。つまりスイッチプレートの厚さ分(1.5mm として)スイッチノブがピックガードから高く出るのである。ブライアン、あなたは良く考えているよ。既成概念に囚われていないんだね。






■■■ ピックガードの構造物としての位置づけ ■■■


【図10】

 レッドスペシャルのピックガードは、例えれば91年までのマクラーレンのマシンと同じである。といってもさっぱり分からないであろう。簡単に言えば、PU、スライドSW、ボリュームなどの部品はボディー(モノコック)に直接取り付けられており、ピックガード(カウル)には一切部品が取り付けられていない、ということだ。ボリュームもボディーに直接取り付けられて、延長シャフトを使ってボディー表面に引き出している凝りようだ。

 この構造はピックガードが文字通り「ビックガード」としてしか機能していないのである。すこぶるシンプルな構造で、かつピックガード表面に余計なスクリューが出てこないという美しさもある。ブライアンらしい考えである。しかし後から取り付けるピックガードは、ボディーに先に取り付けられているPUやスライドスイッチ、ボリュームなどとシビアな位置合わせが必要である。欠点といえば欠点であるが、ブライアンならそんなのお構いなしだったのであろう。まあワンオフモデルだからどうでもなるし。ちなみにストラトはご存知の通りすぺてピックガードに部品を載せている。楽だよね。そしてBurnsもストラトに同じである。




■■■ ピックガード固定用スクリューの本数と位置の考察 ■■■


【図11】

 レッドスペシャルのピックガード固定スクリューは図11に示すように「6個」と、ちょっと少なめである。これは前にも書いたように

・ピックガードに部品がつけられていない
・3mmという厚みから来る剛性
・材質はアクリル?

により、ピックガードがゆがまないという理由からであろう。



 しかしスクリュー本数の少ないなりに、スクリュー固定場所には魔モノが潜んでいた。それは向かって右側のスクリュー(図11/E部)である。フライヤーさんのリペア写真で、ピックガードをはずし、ピュアボディーだけになったレッドスペシャルがある。同じ角度からのCAD画を図11に示しておこう。ここで特徴的なボディーの出っ張りをみつけた(図13丸部)。図8からも分かるように、それはスイッチプレートの保持場所と、ピックガード締結スクリュー用の「島」である。

 と推測するのは、極めて自然であろう。しかしこれがトラップであった。レッドスペシャルの画像から見ると図11/E部のスクリューはリアPUより少しだけ下のライン上に位置するのが分かる。しかしだ、図13の丸部はどうみてもブリッジより下のラインなのである。これは悩んだ。そしてレッドスペシャルの国内最大BBSで質問をしてみた。すると「スイッチプレートに孔がありそこに留めている」との教えを受けた。いいねBBS。ということで、位置は分かったが、なぜこの島があるのか?はいまだに謎である。唯一考えられるのは、ブライアンがピックガードの孔を開けるときに、本当はこの島の部分に開けるはずだったのを間違えてしまった、という説である。こればかりはブライアンに聞かないと分からないだろう。


【図12】

【図13】



 ちなみにこの疑惑スクリューの近辺のピックガードに丸い10mmくらいの孔が開いて知るのは、このページを探し当てた方は当然ご存知のことだと思う。初期には孔が開いていただけであるが、後期はそこに黒いテープが貼られていた。このテープがいかにも「アレ」な感じであり、神経質なブライアントは思えないくらいの「アレ」なのである。昔何かで読んだときには「トレブルブースター回路」を内蔵する計画の名残と書いてあった。真相は?



■■■ PU関係 ■■■

 ご存知の通り、レッドスペシャルのPUはトライソニックである。しかしまだまだ知識の少ない私はトライソニックはひとつだけと思っていた。すなわち本物のレッドスペシャル(オールドレディー)にも、Burnsのレッドスペシャルにも形状的には同じ(図14)モノだと思っていた。しかしBurnsに搭載されていたトライソニックをCAD化してレッドスペシャルに載せてみると、取り付け耳の部分がボディーにもぐりこんでしまうことが分かった(図15-A部)。つまりPUのザグリが浅いのだ。本物はトライソニックVという話もあるのだが、形状が分からない。ケース横から耳が出ているのならぴったりなのであるが・・・


【図14】

【図15】



【図16】

 ちなみにオールドレディーの場合はPUはボディーに直付けされている。そのためPUの高さ関係がボディーとネックの形状で決まってくるのだ。高さ(厚み)関係は今回のモデリングで最も苦手とするところである。ピックガードの厚みが3mm、PUサラウンディングの厚みが2mmとすれば、各PUがPUサラウンディングからどれだけ頭を出しているか?ということで高さ関係を推定することができる。見たところフロントPU側でPUの出っ張りが1mmくらいか?

■■■ ブリッジ関係 ■■■

 レッドスペシャルのブリッジはちょっと変わっている。ブリッジ自体は各弦専用の「駒」構造になっていて、ボディーに直接タッピングスクリューで締結されている。そしてこのブリッジは、いわゆる「ローラーブリッジ」であり、アーム操作で弦がブリッジに引っかからないようになっている。このブリッジ駒には5本のローラー用溝が切られていて、オクターブ調整はそこの場所を入れ替えて行う。このローラーは弦で押さえつけられているだけの構造であり、演奏状態で弦が切れると大変だ(ローラーが散らばってしまう)。


【図17】

【図18】

 さて問題は
●ブリッジの全体高さ調整
●各弦ごとの高さ調整
がどのような形で実現されているか?ということである。


タイプ 各駒(弦)の高さ 全体の高さ 備考
タイプ1 駒ごとのシム(B)で調整 全駒にかかるシム(A)で調整 各駒のL1/L2は同じ(駒の高さ関係はすべて同じ)で作りやすそう
タイプ2 駒のL2寸法で決まる 全駒にかかるシム(A)で調整 あらかじめL2の深さを決めて駒を加工する必要ある
タイプ3 駒のL1寸法で決まる 全駒にかかるシム(A)で調整 あらかじめL1寸法を決めて駒を加工する必要がある

 オールドレディーでブリッジの斜めから撮った写真は見たことが無いのだが、レプリカモデルをいろいろ見るとブリッジ上部には各駒の高さ差があるため、それと加工の際、L2の溝だけ駒ごとに分けるのは面倒という二つの理由でタイプ2は無いだろう。同じように各駒のL1寸法が異なるタイプ3もちょっと考えにくい。

   すると各駒を作る時の作りやすさと、各弦の高さ調整をしやすいタイプ1が最有力である。ただしオールドレディーは調整機構を考えていないかもしれなく、そのときはタイプ1だろう。今回はタイプ1で決めることにしよう。でもブリッジのRってフレッドボードRと同じでいいのかな?


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