ネック上のフレットは絶対的幾何学寸法で規定されるため寸法測定にはもってこいなのである。レッドスペシャルはも609mmスケールである。この609mmから各フレットの位置が計算できる。0フレッドとブリッジ間609mmを17.817で割った値34.24mmが0-1フレット間距離である。次は609mmから34.24mmを引いた値をまた17.817で割った32.32mmが1-2フレット間距離となる。さてフレットの計算が出来たら次なる試練が待っている。
ちなみにレッドスペシャルのネックはボディーに半分程度入り込む形状である。ストラトやレスポールなどはよくあんなに少ない接触で弦のテンションによる回転モーメントを支えられると関心してしまう。レッドスペシャルはそんな不安を抱かせない安心設計なのである。ブライアンらしい。
まず図1を見ていただこう。問題を明示的にするため、フォルムをわざとデフォルメして書いている。図はレッドスペシャルマニアの方なら簡単に分かると思うが、水色がネックシェイプ、オレンジがフィンガーボード、赤がボディーである。問題はXY平面(正面図)でわかるネックの幅方向に広がりに関するものと、YZ平面(側面図)で分かるネック厚み方向に関するものである。
●ヘッド部首形状(正面図)
ナットからヘッドくびれにかけての形状(図1-B部)も分からない。まあここは短い部位なので体制に影響ないから「どうでもいいじゃん?」かもしれない。が、CAD化の時にはこういうところまで決めないと絵がかけないので、重箱の隅状態に陥ってしまうのだ。さて上記ネックポケットとは逆でXY-1のようにネックのアウトラインそのままでヘッドのくびれまで行くのではないか?と思っている。XY-2のようにナット部で折るのは面倒だからである。
●ヘッド部折れ曲がり箇所(側面図)
ヘッドはネックに対して4度の角度がついているとのことだ。これもどの部分で曲げるか? 上記ヘッド部首のところ(図1〜YZ-2)で曲げている絵も見かけるが、トラスロッドカバーが曲がりにかからないだろうということもあり、図1〜YZ-1のようにナット部(フレッドボード端)で曲げているのだろう。
●ボディー内セット部幅形状(正面図)
ネックは0フレットから24フレットにかけて幅が広がる。ちなみに0フレット部が46mm幅、12フレット部が51mm幅だそうだ。この値から幅方向kの傾きが分かり、24フレットのネック幅は54mmと計算できる。この傾きが24フレットからネックエンド(リアPU直前)にかけて維持されるのかされないのか?ということである。図1のXY-1は途中でY軸に平行になるというもの。これは
・ネックポケットはやっぱり長方形だろう
・レストアの写真でネックポケット部のサイドがなんとなく削られているように見える
から推測した。また折れる箇所はフィンガーボードのPU端部であろう(図3の色が変わっている部分)。一方ネックの身になってみると、図1〜XY-2のように上から下まで曲がらずに気持ちよく一本気を通したいのでは?ということも考えられるが・・・
●PUサグリ部とボディー基準面の関係(側面図)
ボディーとネックは2度の角度がついているとのことだ。その2度がどこ部分から折れているのか? まずこれはフィンガーボードのPU側端であろう(図3の色が変わる部分)。ここで折れてネックポケット部分はボディー面と面一になるとした。さてネックはフィンガーボード接着面からどう曲がるのか?
・直接折れ曲がる(図1〜YZ-1/2)
・一度段がついて曲がる(図1〜YZ-3)
またPU逃げのザグリははどこにあるのか?
・フレッドボード端に直接(図1〜YZ-1)
・少し離れている(図1〜YZ-2)
これらの疑問は楽器屋でブライアンメイ本を立ち読みしたときに解決した。まさにフィンガーボード端の拡大写真があったのだ。それを見るとYZ-1の形状だということが分かる。が、喜び勇んで家に帰り、PCを立ち上げ図面を書き始めたときに「あれ?」となった。ネック端がPUザグリの端とドンピシャにして絵を描くと、フライヤーさんのレストア写真とちょっと違う感じになる。真正面から撮ったピックガードをはずした写真をみると、ネックポケット部のザグリ形状はザグリ/グルーブ部(図5-A部)と基準面/ランド(図5-B)のY方向の間隔が等間隔に見えるのである。PUの位置は決まっているので、ザグリを広く取るとこのランド-グルーブの関係がちょっと崩れてくる。さらにPUネジ止め(耳)逃げもザグリを広く取ると写真との形状とは違ってきてしまう。ここはとりあえず下のように書いておく。
【090207追記】
上記の疑問点が解決した。フレットボードのPU側エンドの形状は右の図5-2が正しい。単なる私の計測ミスだった。つまりフロントPU用のザグリエッジとフレッドボード端は完全に一致する。ブライアン本が正しいことが数値上でも確認できたのである。すっきりすっきりである。くわえてフレッドボード端部のRも前回書いたものより小さな値であった。
フィンガーボードを含めたネックの厚みは0フレットで28mm、12フレットで30mmといわれている。ここで分からないのが、その厚みのうちフィンガーボードとネック本体をどういう割合にするのか?なのだ。条件はフィンガーボードはR7.25インチということである。ポイントはフィンガーボードの横から見える厚さである。ネック幅(0フレットで46mm、12フレットで51mm)と上記Rからフィンガーボード両端から見える部分が幾何学的に決まる。いろいろな写真を見まくってセンターラインの一番厚い部分で6mmとした時に、フィンガーボード両端の厚み部分(0フレットで4.6mm 、12フレットで4.0mm)がそれらしかったのだ。
ちなみに少ないとはいえネックは2度の角度がついているわけである。2度なんて誤差に思えるが、YZ-1のような構造だと、フィンガーボードは19フレット付近のボディーとの勘合部位(図7-A部)まではちょびっと埋まってしまうのである。ちなみにA部では約2mmくらい埋まる。結構見逃せない。さらに図8で3mmのピックガードを載せてみると、フレットボードはほとんど埋まってしまう。2度っていう角度は小さく感じるが、思ったよりも影響が大きく及ぶ数値だ。最近は2度と言う数値に多少の疑惑を持ち始めている・・・ なんとなくフレットボードがもっと厚いか、ネック-フレット接合面がもっと高い位置のような気がする・・・
ネックは22-23フレット裏に仕込まれたM10(くらい)のボルトでボディーに固定される。つまりストラトみたいなデタッチャブルなのである。このボルトはフィンガーボードを貼る前にネックに取り付けられているので(図7)、分解は不可能である。このボルトにトラスロッドが取り付けられている。
ネックがヘッド裏につながる造形はちょっと異形である。それはなぜかといえば、ブライアンの「でかい手」にあわせた極太ネックにある。ネックがあまりにも厚みがあるため、そのふくらみがヘッド部までそのままつながっていくのである。オールでレディーは図10に対してもっと太く短くつながっている。このあたりはちまちま修正することにする。