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■■■ シェイプを決める ■■■

 さてそろそろ終盤に差し掛かってきた。今回はピックガード(以下PGとする)である。レッドスペシャルのPGは3mmもの厚さがあり、形としてもレッドスペシャルのキャラクターを決めている重要な部品である。

 さて、レッドスペシャルを一から作り上げていくのなら問題ないが、あくまでBurnsボディーを生かしてのピックガードであるので、さまざまな制約のもと作り上げなくてはいけない。そして悩みは、まずシェイプを決めるところから始まった。

 ではまず、オールドレディーとBurnsのボディーとPG、掘り込み部のシェイプを以下の図1/2で比較してみよう。すぐ分かるのは、Bunrsの場合、シンクロナイズドトレモロなので、PGの縦方向のボリューム感に著しく欠ける、ということだ。あとSWプレートのところでも書いたとおり、SWを収める部分の掘り込み幅が大きいため、SWプレート部にかかるPGラインの「くびれ」が足りないことだ。


【図1】オールドレディーのシェイプ。見慣れているので「完璧」に見える。

【図2】Burnsのシェイプ。全体の部品があまりにも上側に寄り過ぎて、ぜんぜんそれっぽくない。この図では、シンクロトレモロ用の貫通孔も書き込んであるが、これをなくすともっとそれっぽくなくなる。





■■■ オフセット ■■■


【図3】の水色がオリジナルの位置、緑が4mm下げた位置である。

 今回オールドレディーもBurnsも原点をおのおのの24フレットセンターとした。これは幾何学的に決まる場所を原点にしたかったという、ちょっと工学系の血が騒いだからである。

 しかし24フレットを合わせた状態で、BurnsのボディーにオールドレディーのPGを重ねてみると、ピックガードの位置がいい位置にこない。試行錯誤した結果、オールドレディーのPG位置から4mm下げてBurnsボディーに重ねると非常にいいバランスになることが判明した。






■■■ 修正ポイント ■■■


【図4】BurnsボディーにオールドレディーPGを重ねた。タイトな部分が分かると思う。

 さてシェイプを決めるための制約は以下の通りである。

【1】重要度A
  シンクロナイズドトレモロブリッジ用の穴埋め部分を隠す
【2】重要度A
  SWキャビティーにかからないようにする
【3】重要度B
  ボディーの大きなふくらみに対する対応
【4】重要度B
  ポットノブ横のスクリュー留め部位置が非常にタイト

 右の図3はBurnsボディーにオールドレディーのPGをそのまま重ねたものである。【1】〜【4】の課題を回避しながらも、オールドレディーPGのシェイプを崩さないような、ぎりぎりのラインを何度も書き直した。






■■ 修正 ■■■


【図5】BurnsボディーにオールドレディーPGを重ねた。タイトな部分が分かると思う。

 まず簡単と言うか、こうとしか出来ないところから。

 右図5の紫が新PGラインだ。緑はオールドレディーを4mm下げたライン。そして青で囲った部分は、ボディー外形からのオフセットでPGラインとて一意的に決まる部分である。こういうところは全くもって楽チンだ。CADだと「オフセット」コマンドでさくっと描けてしまう。



 さて次は下の図6を見てもらいたい。向かってストラップピンがある左のつの部分からブリッジ部分に伸びてきたラインは、A部でブリッジ下の水平ラインになる。当然この水平ラインはシンクロナイズドトレモロのくり貫き部を隠さなければならない。実際は4mm下げたオールドレディーのPGシェイプと、ちょうどいい感じに重なった。

 ここからがハイライトである。

 今回のもっとも重い制約はC部である。C部はSWプレート用のチャンバー部から中心側に逃げないといけない。なので、C部のポイントはリジットに決まるのだ。一方、緑のオールドレディーPGラインを見て分かるのは、C部からD部にかけては内側にくいっと曲がっていて、C部はウエストくびれラインになっているということだ。問題はC部の位置制約のために、Burns改造の場合上記「くびれライン」が弱くなることである。

 別にD部の位置をもっと内側に寄せて「くびれ」を作ってもいいのである。しかし、右側のE部はボディーアウトラインからの一定値のオフセットという制約のため位置が変えられない、という現実がある。上記両方の制約を守ると、PG最下部の形状が幅方向に「太っちょ」になってしまうのだ。これはこれで不恰好であると判断した。

 いろいろな制約のため完全形のシェイプを作り出すことは出来ないことが分かった。で、今回は

・ちょっと太っちょ
・ちょっとくびれが足りない

 という、幅とくびれを痛みわけ状態とした。







【図7】きれいな穴が新PG用、ちょっとぐちゃっとしているのがBurnsの穴

 そして最後に隠れたもうひとつの制約、D部のPG締結スクリューの位置である。オールドレディーのこの部分を見ると、ボリュームノブでD部のPG締結スクリューの頭が半分隠れているのが分かる。しかし今回の形状でその位置にスクリューを配置すると、SWプレート用チャンバー部にかかってしまう(ねじ込めない)。D部のスクリュー締結部位をボリュームに近づけられない。またBurnsでもともと使っていたスクリューの位置がまたすぐそばにあるため、結構きわどい位置に決めなくてはならなかった。






■■ ブリッジ下部分 ■■■


【図8】PG形状の変遷

 レッドスペシャルの構造は日々これ勉強である。この「Burns大改造」でも、分析が終わっていると思っていたりするが、実はまだまだ新発見があったりするのである。ブリッジ下部分もそうであった。

 実は当初ブリッジ周辺部のPG形状を図8の右(緑)ようにしていた。つまりブリッジが直接ボディーに固定されるPG形状である。PGの取り外しも楽チンだ。しかし微妙に良く分からない場所であって、次第に「ブリッジはPGの上に乗っている」という風に気持ちが動いてきた。




【図9】PGをはずした状態

 前にも何回か書いたが「おかしいな?」と思ったところは大体おかしい、という「直感理」論がある。私の中で直感理論の正解率は50%を越えている。その直感理論にアンテナに反応したのが「PGのブリッジ下は別ピース疑惑」である。これはオールドレディーの写真を見たときにPGに切れ目風?の線が見えたことに端を発する。最初は、もう相当使い古しているので割れていちゃったんだなぁ、などと思っていた。しかし、いろいろと調べていくうち、それは別ピースだという確信に変わった。そして潔く設計変更を実施した。

 ブリッジ下のPGを別ピースにしておけば、上で楽チンと言っている「PG取り外し」も同様に楽チンだ。一体型PGだと、PGをはずすときにブリッジ固定のスクリューを全部取り外さなければならないので大変だ。右の図9のようにPGをはずしてもブリッジがこのように残るのである。






■■ PG完成 ■■■

 そして完成したピックガードと組み込んだ状態のピックガード。まあ本物と比べなければ「くびれ」は分からないかな?


【図10】

【図11】