大して裕福でないというより、むしろ貧乏に近い家庭で育った私は中学でロックに目覚めるも、友人がエレキギターを買うのをうらやましく横目で見ながら3年間を過ごしたのだった。しかし無料なカタログはそれこそ穴の開くほど、ボロボロになるほど見た。それにカタログのバージョンが変わるとまたゲットした。今も2階の趣味の部屋のクローゼットの中にそれらのカタログは眠っているのだ。そして無事高校に入学、お祝いやらなにやらでたまったこずかいを握り締め、エレキギターを買いに走ったのであった。
中学の頃から散々脳内シミュレーションを繰り返しており、買うモデルは決まっていた。グレコのレスポールEG600だ。しかしなんでそのモデルを選んだのか?今となってはさっぱり思い出せない。今なら絶対チョイスしない、ブラックカラーや3ピックアップ、カスタムタイプなのである。
楽器屋はどこでもいいのだが、なぜかマイナーな相模原のROCK INNを選んだ。なぜここを選んだかは今でも謎である。確か春うららな土曜日だったと思う。自転車で大枚握り締め「これください」と言ったのは覚えている。ギターはビーターフランプトンモデルなので、純白なPUのエスカッションがついていた。しかしそれをあまり好んではいなく、何気に「このピックカバー(エスカッションなんて名前がついていることは当然知る由もない)黒にできませんか? できれば黒のピックガードもつけてもらいたいんですけど・・・」と聞いたら、「ああ、できますよ」ということで、後日引渡しとなった。そして翌週、愛チャリで念願のエレキギターをゲットできて、それこそ天にも昇る気持ちでいっぱいになったのであった。ついでにグヤトーンのアンプも買って、肩にソフトケースに入ったギター、後の荷台にアンプを手で押さえながら、至極危ない格好で家まで帰ってきたのを伝えておこう。
【追記】
そうそう、なぜこのモデルを選んだのか思い出したぞ。ヤングギター別冊の「必殺のハードギター」を買って、ニール・ショーンのこのギターを見て気に入ったんだった。と思ったのもつかの間、本の発行日を見たら昭和55年とあり、ギターを買った54年とは1年の差があった。ということで舌の根も乾かないうちに訂正だ。
EG600の仕様は以下の通りだ。
●ピーター・フランプトンのコピーモデル(79年製)
●レスポール カスタム型
●アーチドトップ
●ゴールドバーツ
●3PU(センターポジションはフェイズアウト)
●ネック幅:43.5mm(ナット) 52.5mm(12フレット)
●ネック厚: mm(1フレット) 25.4mm(12フレット)
●質量:4.5kg
EG600のカスタムブラックはピーター・フランプトン、レッドサンバーストはキッスのエース・フレーリーモデルである。当時のキッス人気からレッドサンバーストのほうがよく売れたっぽい。ちなみに78年モデルはパーツがシルバーのようだ。
ピックガードは上でも書いたように3ピースのブラックに、エクスカッションもブラックに変更してもらった。保証書と一緒にクリーム色のピックガードが同梱されていた。けどトグルスイッチのプレートは白のままでちょっと間抜けだ。いつかは変えようと思いながら30年近くも白のままである。そのトグルスイッチ自体はオールドの雰囲気をかもし出す暗いオレンジ色でちょっと気に入っている。フィニッシュはカスタムだ。若かれしころは「ゴージャス」なものにあこがれていたんだと思う。表と裏に3Pのバインダーが施され、ヘッド部も豪華なバインダーやインレイがあるので確かにリッチだ。でも今はシンプルスタンダードなレスポールがかっこいいと思う。やっぱり年をとってくると「渋い」方向に走るのだろうとしみじみ感じた次第である。
後にストラトを買ってから、「やっぱりレスポールは重い」ということに気がついた。PUセンターではフェイズアウトになるため、シャリシャリした音になる。小さいアンプで鳴らしていた頃はこれがまったく気に入らなくて、使うことは無かった。が、スタジオの大きなアンプや後にもらったツインリバーブもどきの超大型アンプ(グヤトーン)で鳴らすと、このシャリシャリと大きなスピーカーとあいまって、なんとなくジミー・ペイジのライブの音のようで、ちょっとお気に入りになった。