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レスぺ本の発売で、きちんと撮影された画像がネット上に公開されている。この画像をスケールを合わせレイヤに重ねアルファを変えて透過させたりしたとき、画像がぴったり重なればベリーハッピーなのだが、そんなことは全くなくて、どっちを信じればいいんだ!的な悩みで日々悶々としてしまうのである。なので、ある程度の割り切りの基にモデリングするしかない。但し前章で書いたように、写真を幾何学的に解析しパーツ寸法などの推定することも出来なくもない、というかむしろ「確証」みたいな心のよりどころができるので、積極的に活用していきたい。
今回はこの公開されているレスぺ/オールドレディーの全景とボディーの両写真からあれこれを検証してみたいと思う。参考に、私が利用しているCADはご存じのとおりRhinocerosであるが、このCADの3D図表示部「パースペクティブビュー」はカメラ焦点距離、カメラ位置などを自由自在にコントロールできる。今回の解析にははこの機能が大変役立ったのだった。
さてネットで公開されている写真で、正面から撮影されボディー形状推定やパーツ配置推定に役立つ全体写真は以下である。
【1】X線透過写真
【2】R92年ライブパンフレット掲載写真
【3】RS本撮影時の写真1(ボディーの高解像写真あり)
【4】RS本撮影時の写真2
【5】ギターマガジン掲載写真
【6】79年ジャパンツアー バックステージ(おまけ)
【7】RS本撮影時ビックガードはずしボディー写真(ボディーの高解像写真あり)
これらの写真に対して考察をしていくが「書くため」には自分がきちんと理解していなとだめで、それが解析レベルと高めていくのである。「人に物事を説明するときは自分が一番分かっていないと説明できない」ので一生懸命勉強する、ってのと同じである。
ギター全体が映っている写真は、比較的ちゃんと撮影された3枚(レスぺ本用)と、92年ライブパンフレットの全体写真、そして神であるX線写真が自分の中での一軍である。実は二軍は無くて、三軍に79年日本公演時に撮影されたヤングギターに掲載されたモノ、そしてギターマガジンに掲載されたものあたりがある。
当然ながらこれらの写真も微妙にずれがあって、どれを信じてよいのかが非常に悩ましい。しかし絶対値的に信用できるのがネックスケールである。レッドスペシャルは24インチ(609mm)スケールと言われており、それを基準とすることにした。しかしスケールサイズで画像を合わせても、ボディーのサイズが違っていたり、ボディーの片側だけあっていなかったり、まあ眠れなくなるほど悩ましい写真群なのである。これが解析に気合が入らない理由であった。
何事にも「理由」を付けないと納得しないのが技術屋の悲しい性であり、「撮影軸が垂直じゃなかったんだな」とか「近くから広角系のレンズで撮って歪曲したんだな」とか、なにとか理由をつけて自分を納得させようとしていた。かみさんい言わせると、無駄な悩みだそうだ。
以下に全体写真を並べポイントとなるところにコメントをしてみよう。参考にする基準線を以下とした。
@0/12/20フレット
A理論ブリッジ(オクターブチューニング無視位置)
Bボディーテールエンド
Cボディー幅
では各々の画像を見ていこう。
先にも書いたが今のところ最も信用できるのがこのX線写真である。この「神」たる素晴らしい画像、ほれぼれするのである。撮影距離が1mと解析されているので、内部部品の寸法も推定できるのである。実は全体の写真を見ていると、ネックヘッド部分はシンメトリーじゃなかったりするのが分かる。1-3弦側に寄っている感じ。ヘッドに貼ったコインも中心軸からずれている。
このパンフ写真は神と比較的相性が良い、つまり良く重なる。初期のモデリングはこの神とパンフ写真から行ったってこともあって、割とあっているのでは?と今更ながら思っているのである。パンフ写真は12フレットあたりが撮影中心と思われる。
ではなぜ斜めなのか?よくよく考えたらこの画像のオリジナルは右の画像のように斜めに配置されたものだった。こうするとつぎはぎの境目はぴったりと縦になる。いまは見つけられないが、この画像は92年のブライアンソロツアーのパンフレットにあったものと読んだ記憶がある。そのオリジナル画像なのか、それともこれをスキャンした人が大きいサイズだったので分けてスキャンしたのか、なんとなく後者のような気がする。
そしてブリッジから0フレットまで弦に重なるか否か?の直線を引いてみる。実はレスぺ本の画像は弦と直線を引いたものがばっちり重なる。しかしこのパンフ画像はボディー上あたりでは重ならない。9-5フレットあたりはばっちり重なるが、例のつぎはぎしたあたりから0フレット付近までは、つぎはぎの失敗が如実にわかるくらい曲がっている。
解析の結果、つぎはぎ部で切り離し、ヘッド側の画像をを半時計方向に0.7度回転させるとピッタリとなることが判明した。以下のGIFアニメでオリジナルと修正後のものを比較する。
解像度的にはばっちりなレスぺ本掲載写真1である。実は背景真っ黒なので撮影の時に照明大変だっただろうなぁ・・・と思っていた。しかしどうもサイド部の光が白っぽい、何か「ウソ」の香りがする(デカワンコかい!)。そんな時ネットで白バックの全身写真を見つけた。金属パーツの反射具合やキズのつき方、マホガニーの目の見え方などなど見比べると理由が分かった。白背景を黒に塗りつぶしたんじゃん。このご時世、撮ったまま出しなんてないのだろうねぇ。
この写真から推定できることは、3次投射(撮影)になっていることだ。オールドレディーなんて普通触ることのできない国宝級のギターを撮影する機会を与えられたにもかかわらず、きちんと垂直を出さない撮影なんて恥ずかしすぎるぞ(怒)。撮影中心は12フレット近辺だと思う。X軸を中心にヘッドが近づく側、Y軸を中心にボディー1-3弦側(向かって右側)が近づく方向に傾いていると見える。
さてレスぺ本1(とする)は、「上記白背景を黒に塗りつぶした」事実があったため、左サイドが見えていたが画像処理で塗りつぶしてしまったかも?とも考えた。しかしあちこちにそれを否定する事実が見つかったことにより、「黒塗りつぶし説」は封印となったのであった。
レスぺ本掲載のための全体写真の2つ目である。これは照明に凝っていて斜光でエッジやコントラストを利かせた写真になっている。
この写真実に悩ましい。X軸を中心軸とした傾きはゼロっぽく(カメラ撮影中心線とレスぺ垂線が平行)、ボディーY軸方向のスケールはばっちりなのである。下の写真には基準線あたりを抜き出してみた。すべての部位が理想基準とぴったり重なっている。
がしかし、Y軸(トラスロッド)を中心として、多分多めの回転角がついてしまっている。下の写真でわかるが、ボディー左側と右側でボリュームがだいぶ違う。これはY軸中心でボディー1-3弦側(右側)が手前に回転してしまっている証拠である(カメラが斜めから撮っているともいえる、相対的な問題ね)。またネックフレットを見ても、均等のRではなく画面下側(ボディー右側)が起きているのでアシンメトリー状態である。いつか、どれだけ傾いているか計算してみようっと。
海外ギターマガジンにレッドスペシャル特集されたときの写真らしい。案外正面から撮影されたものってないのだ。0-12-20フレットの間隔がほぼ合うことからX軸中心の傾きが無いように見えるが、ボディーのふくらみが大きいのが何となく納得できない。それも幅方向はリアル寸法に近いがテールエンドだけが伸びている感じ。これをどう解釈すればよいのか?私にはその知見が無い。なので、参考写真として載せるだけね。
人生初ライブがクイーンの79年ジャパンツアーだった。超興奮したのを憶えている。しかし当時武道館でけぇ〜と思っていたが、この前東京ドームのベビメタライブ行ったら「クイーンのライブと同じくらい?」と感じた。1万人対5万人、同じわけないよね。
この写真は長く私のレッドスペシャル(当時はそんな名前付いていなかったよなぁ?)の標準画像であった。ネットなんてない時代なんで、「ブライアンメイのオリジナルギター」を正面からきちんと撮影した貴重な写真だった。なので私の中のレスぺシェイプはこれが刷り込まれている。しかし基準線を見てわかる通り、Y軸基準でだいぶ傾いている。ギターを壁に立てかけて真正面から撮るとこんな感じになる。なので、ボディーがヘッドに対してだいぶ前に出てきているのだ。つまりボディーがボリューミーに見える。逆に言えばヘッドが小さく見えるのだ。上のギターマガジンとは違い、ボディー幅方向もきちんと膨らんでいるので、投射図的にもあっている。唯一一点を除いて。
その唯一一点。ボディーがあれほど膨らんで写っているということは、相当斜度がついて撮影している。しかし20フレットを起点にしてボディーエンド側の拡大に比べ、20-0フレット側がほとんど変化がないことはおかしい。もっと短くなっているべきである。これも「なぞ解き」として残しておこう。
しかしだ、国宝級のレッドスペシャルをこんな風にギタースタンドに置くでもなく、直接リノリウム床に置き、壁にヘッドをあてて立てて置くなんて、まあ当時はそれほど気を使っていなかったんだなぁ、と思う。クイーンも売れてはいたが、まだそんな扱いだったんだなぁ、と今からすると驚きである。
全体写真ではないが、レスぺ本撮影ではピックガードを外したストリップなボディーを高解像度で撮ってあった。これは萌えますな。この写真が問題ないのであれば、CAD化のマスターになりそうである。さてどうだ?
レッドスペシャルを正面から撮影したを比較する。今までいろいろ言ってきたが実際のカメラレンズにはディストーションがあり、画がひずむことは否めない。さらにカメラがギター表面に対して垂線上にあるとは限らない。そういう状況のもとどの画像がシェイプ作成に最適化を考える。以下にGIFアニメを乗せておくが、左側が1秒間隔、右側が0.5秒間隔である。