■■■ 富士三湖制覇 ■■■


■■■ その1 ■■■

 夏休みも最後の日、やっぱり何か思い出に残ることをしないとダメだ、と意を決して早朝2時半に起きた。そして3時過ぎに出発したその先は「河口湖」である。

 そう、我が父娘恒例の折りたたみチャリサイクリングである。2年前には本栖湖と山中湖を制覇していた。今回は河口湖と西湖を制覇する計画である。

 朝3時の道路は1日24時間のうちで一番すいているのでは?と思えるほどの快適さである。あっという間に大月まで着いた。そして大月からは無料試験期間中の河口湖線に乗ると、あっという間に河口湖ICに到着だ。うっすら明るくなってきたところで、横に見える富士急ハイランドに興奮する娘である。ちょうど去年の今頃、富士急で絶叫マシン三昧したのだった。しかし車の中でハイ状態が続いている娘を見ると、ああやっぱりこういうイベントはたくさんしなくちゃなぁ、としみじみ思うのであった。

 河口湖に着く寸前、「やっぱりおにぎりはセブンイレブンだよね」をした。なんでセブンイレブンのおにぎりが一番おいしいのだろうか? そして河口湖に到着、車を停めるところを探す。河口湖畔で一番の繁華街と思われるところの「無料駐車場」に入るも、あの広大な場所がほぼ車で埋め尽くされている。朝の5時前というのに・・・。それでも1台だけスペースを見つけて車を停めた。この観光地に足を下ろす瞬間が「おお、来たぜ!」とハイになる瞬間である。東京の殺人的暑さを忘れる寒いくらいの涼しさであり、朝の凛とした空気が気持ちよい。とりあえず湖畔でおにぎりをほおばるが、早く自転車に乗りたい父娘であった。

 さて車から自転車を降ろし、組み立てを始める。あっという間に2台の自転車が完成だ。そして出発!

 周回は当然半時計方向である。なぜかといえば道路左側を走るのであり、その方が湖に近いからだ。走り始めてすぐ分かったことは、あの駐車場以外の駐車場はガラガラじゃん、ってことだ。

 快適に走る、本当に快適。程なくホテル・旅館街のところで自転車歩行者専用道になった。さらに快適だ。富士山も全景がきれいに見える。逆さ富士に娘が感激している。そしてレンズを200mmまで伸ばして撮ると山小屋が良く見えた。湖のまん前の旅館からは浴衣姿のお姉さんが出てきて、早朝の富士山を撮影していた。う〜ん、いい絵である。






 河口湖の夏休みシーズンは学生の朝も早い。ヘルメットをかぶった女子学生が猛スピードで我らを抜いていった。そしてその先のカーブで大きくこけた。笑うに笑えず知らん振りをしたが、女子学生はバツが悪そうだった。どうやらその先で行っているボートの合宿に遅れて急いでいたようだった。さすがに写真は撮れなかったぞ。





■■■ その2 ■■■

 さてこの折りたたみチャリ、写真の通り非常に小さいタイヤであり、かつ変速機がない。なので、娘とほぼ同じ速さでゆっくりと走れるのがいい。なので、お父さんだけ先に行っちゃって・・・というクレームも無い。どこかに行くときは必ずもって行きたい装備だ。




 河口湖の北エリアにはオルゴール館があるが、そこの裏側サイクリングロード側から見るとちょっといい感じだ。




 さらに進むといきなり花満開のエリアに突入した。どうやら花をテーマにしたイベント会場であるっぽい。娘が言った。「”花まちみち”」っていうんだ・・・」ってのにはずっこけた。「花かいどう(花街道)だよ!」と大爆笑になった。ほほえましい光景とみるか、漢字の読めない馬鹿なヤツとみるか、親としては複雑である。




 河口湖も奥地に来るとサイクリングロードがあったり無かったりする。「この先行き止まり」という看板を無視しチャレンジングに進んでいくと、草ボーボーで最悪になった。しかしワイルド父娘はそれでも「本当に行き止まりなのか行ってみよう」とずんずん進む。草を掻き分け進むとそこは湖畔だった。小さな川が流れ込んでいたが、この川の水がめちゃくちゃきれいでめちゃくちゃ冷たい。つまり湧き水なのだろう。いいなぁ、富士五湖。で、結局行き止まりにはならなくて、なんとか道に戻れた。勝った!

 太陽が昇ってきて日向を走るようになったが、陽は強いが空気が圧倒的に冷たくて、ひじょ〜〜にさわやかである。サイクリングには最高だ。汗を全くかかないのだ。ちょっと富士五湖サイクリングが病みつきになりそうだ。

 湖を見ると魚がたくさんいる。手を伸ばせば簡単に捕れそうだ。






 さて、あまりにも快適すぎてあっという間に河口湖の西のはずれまでやってきた。車を停めたのが東のはずれなので、河口湖半分制覇。約10kmの道のり、途中でいろいろと遊びながらだったり、ゆっくり走ったりで出発から90分だった。





■■■ その3 ■■■

 あっという間に河口湖半分を制覇した。

 そして当初の計画通り、ここから西湖へ行く。行くんだが、すごい上り道な記憶がある。で、実際記憶どおりだった。負荷がかかった状態(つまり坂ですな)では、もう娘にかなわない。彼女はお父さんを抜かして立ちこぎしながらずんずん進んでいく。が、さすがに急坂モードになって停まって待っていた。さてそこには道が3本。A路は普通の車が走る道路でうねうねである。もう一つのB路は森の中の超急な獣道で、すごく上の方で道路が見える。最後のC路はどこに行くかわからない微妙な道。悩んだ末「距離が短いけど急坂なB路」をチョイスした。すごく急なので、ちょっと行くともう道路が眼下になる。しかし獣道はすぐになくなり、道なき道、それも急坂になった。その急坂で娘がこける。ここで手を出すか、自分で解決させるか?微妙だ、微妙すぎる。手を出すのは簡単、出さないと自暴自棄にもなりそう。だが、結局は手を出さないで、彼女の怪力に任せた。やつは自転車を横にして引っ張りあげるという暴挙に出た。が、「この方が簡単だったんだもん」だそうだ。子供は常識で判断してはいけないのだ、とつくづく感じたのだった。

 なんとか一般道に合流した。さすがにさわやかな富士五湖の空気も効き目がなく汗だらけだ。、氷入りのポットに入ったキンキンなお茶が体に染み渡る。そこからも峠まではまだ坂が続くが、あの獣道坂を上りきった我が父娘にはそんなの苦にはならないのだ。そして峠の冷っとしたトンネルを抜けるとそこは西湖なのであった。




 西湖はいい。なんてったってめちゃくちゃ水がきれいだ。このきれいな湖沿いは当然坂もなく、自転車には超快適ある。あまりにも快適すぎてあっという間に最後の西端に到着してしまった。そこにあるプレートによると、深さは71mもあるらしい。その通りで西湖の湖畔に出ると足を踏み入れられるのはほんの1mくらいで、そこからあっという間に深くなるのだ。




 ここで朝の8時、超峠越えや寄り道などローペースで進んだにもかかわらずまだこの時間である。でも計画はココまでである。このまま帰ると多分1時間で車まで帰れそうだ。で娘に聞いてみると

「2年前に本栖湖と山中湖を制覇しちゃったじゃん。今日ここで帰っちゃうと”精進湖”だけ残っちゃうから行かない?」

「でもココから精進湖に行くにはR139に出て長〜い下り、つまり帰りは長〜い上りがあるんだよ、それでもいいの?」

「いこうよ」

 とお父さんよりたくましい娘なのであった。ということで、いざ精進湖へGO。





■■■ その4 ■■■

 西湖の西端から精進湖へ向かうが、まずはR139に出るまで結構な坂道になる。途中で2mはあろうかという大蛇の死骸を横目に、ひたすらペダルをこぐ。そしてやっと平地に出たあたりが「野鳥公園」である。この野鳥公園、広大な芝生がすごくきれいだ。2年前はここで「ゴロゴロ」とやったのだが、今年も「ゴロゴロ」をやりたいと言う。まあ時間は有り余っているからやってみましょうか、とばかり芝生へ出るが、朝露でびしょびしょなので泣く泣く断念し、R139に向かってまたまただら上りの道を行く。

 そうそう、この野鳥公園から入っていける「富士の樹海散策」がいい。いかにも樹海、というところを歩けるのだ。超大きなシダがあったり、地形も凸凹だったり。

 さてR139に出るとそこはもう平らな道で快適過ぎて、鼻歌が出ちゃう。しかし大きなトラックがびゅんびゅんと横を抜けていくのは、ちょっと楽しくないところである。ここを5分も走ると超下りになる。大きな橋を2本越えて、自転車のブレーキが悲鳴をあげるのだ。そして坂を下り終えるとそこが精進湖の入り口だ。でも「いざ精進湖制覇」と燃える気持ちより、帰りにあの坂を上るのかぁ・・・と心がど〜んと重いのだった。




 精進湖は小さいのだ。20分も走れば1周出来てしまう。時はボート選手権ってこともあって、湖面には競争用の区分けロープが張られていた。それにウルトラセブンのロケが横行われていたのも有名な話だ。しかしウルトラマンの子供っぽいストーリーがウルトラセブンでいきなり大人のドラマに変わった感じは面白い。今スカパーでウルトラマンとウルトラセブンが同時に放送しているのでその違いが良く分かるのだ。




 さて「いきはよいよいかえりはこわい」の通りの帰り道。R139戻り、平地から勢いよくこぎ上がり、だけどあっという間に勢いが尽きた。しょうがない押して行こう。たわいもない話をしながら自転車を押す父娘、道路を走るドライバーはどう見えたのだろう?しかし、だ。10分も自転車を押したら、なんとなく弱い坂になった。乗ってみたら以外にこげた。「この先のカーブからはもっと坂がきつくなりそうなのでそこまでがんばろう」なんていいながら自転車をこいだら、そのカーブの先も行けちゃって、何のことはなくR139を制覇できた。うん、結構自転車いけちゃうね。まあ折りたたみ自転車が結構軽い方にギアが設定されているのもあるかもしれない。でもこれはうれしい誤算であった。どんよりとした気持ちが一気に晴れやかになった。








■■■ その5 ■■■

 R139から西湖に戻る道はひたすら下りでもう楽チン。で野鳥公園ゴロゴロのリベンジ、をしてみたが、また芝生はぬれたままでバッドだった。そしてさらに急な下りであっという間に西湖最西地点に到着だ。ここからは湖南側の道を通って帰路についた。ここではマラソン団体だらけだ。西湖はマラソンのメッカなようだ。そして2年前に入ったこうもり穴を通り過ぎ、西湖畔を走ると、あまりにも水がきれいでうずうずしてきた。ここで水に入らなければ、拙者一生の不覚、と適当なところで湖畔に下りて水に浸かった。

「おーちょーきもちいー」

 冷たくて、きれいで最高だ。で驚いたのは、しばらくすると足に小魚がまとわりついてくることであった。よく観るとコリドラスのような魚が嫌ってほどいるのだ。手ですくったらどさっと捕れそうなくらい。足指の隙間のいい感じのところを口でツンツンしてくる。最高だ。病み付きになった。病み付きになりながら横を見ると、花束や線香が置いてある。ううう・・・ここで誰か亡くなったんだな。ちょっと不気味だな。と思ったけど、見て見ぬ振りをして、そのまま小魚に足を突っつかせてキャーキャー言っている父娘だった。






 いつまでもキャーキャー言っているわけにはいかず、西湖から上がり足を乾かしたら、もう足もさわやかで、人生というか疲れきった会社生活も西湖で洗い流したくなったが、どうやったら流せるか分からないので、やり方がわかったらもう一度西湖に来ようとして、西湖をあとにした。西湖東端で西湖を分かれるときに、ベタだけど「西湖サイコー」と娘と叫んだ。

 ここからは行きの超坂上りとは逆の超下りでまたまた楽チンである。行きに30分かかった所を5分で走り去り、またまた河口湖に戻ったが、時間も9時半、かつ道もなんとなくすっきりしないということで、ただ走るだけである。でも15分ほど走ると、芝生公園に出た。2年前もこの公園でゴロゴロしたのだった。先ほどの野鳥公園でゴロゴロが出来なかった娘は、ぜひともこの公園ではゴロゴロを達成したいらしく、一番いい感じでゴロゴロが出来る斜面を探した。そしてゴロゴロした。顔は満面の笑みであり、大満足していた。お父さんは大の字になって横になったらちょっと睡魔が・・・。

 さて残るは河口湖の1/4だ。うねうねする道をあっという間に走り去り、車を停めてある無料駐車場に到着だ。11時半。5時半にここを出発したので、あれだけ楽しんで6時間。やはり朝早いと1日が長いのだ。自転車を折りたたんで車にしまうのが、やけに物悲しい。まだまだ遊んでいたいが、夏休みもあと半日なので、家に帰って明日の準備をしておこう。しかし帰り道中、社外温度は38℃と殺人的な暑さだ。やっぱり夏は富士五湖の別荘で・・・っていう暮らしをしてみたいものである。

 さて、今回3つの湖を制覇して感じたこと。これらの湖では人がいれば釣り師という状況である。日本人は本当に釣り好きなのが良く分かったのだった・・・