久しぶりに輪行した。鉄道に自転車を持ち込んだのはほぼ1年振りである。そして一言で言えば「もう最高!」であった。
3時50分に家を出て八王子まで真っ暗な中自転車をこぐ。しかしまだ9月だというのに、もう寒い。去年のお彼岸にも輪行したが、そのときはまだ真夏スタイルだったのが嘘のようだ。八王子八高線始発4時45分は、もう私の定番である。この時期だと出発時点では真っ暗だが、15分くらい走ると空が赤くなってくるのがいい感じだ。
今まで制覇したことが無いところを走るのは、新鮮な眺めを体感できてお気に入りである。なので今回は毎回の荒川走行で気になっていた、荒川から分岐して東京湾に流れ着く「隅田川」制覇を目的とした。隅田川制覇なので、荒川上流より走ることはせず、いつもの寄居までは行かない。なので、東飯能を鉄道下車駅とした。近いし安いし早いしうってつけである。それと「入間川」サイクリングが結構気に入ったって事もある。
始発だと東飯能に着くのは30分で5時45分だ。自転車組み立てや装備装着で15分、東飯能駅出発は5時30分である。昨年の11月同じ経路で八王子発が5時17分、東飯能に降り立ったのは5時50分。朝が遅いから遅らせたのだった。ここから入間川サイクリングロードまで6.4kmでほぼ下り。日曜の早朝だと車がほとんどいなくて快調に走れるのだ。R407と入間川が交差するところが入間川サイクリングロードのスタートポイントとされているが、今回地図で学習していたら、もっと上流になにやら川そばを走れるところがあった。チャレンジしてみたらビンゴ!近道にもなって、東飯能からの距離を更に縮められた。
入間川を下るのはこれで2度目である(上るのは1回)。どちらも日の出早々のサイクリングで、これがめちゃくちゃ気持ちよい。朝の「凛」とした空気、秋の見事な「雲」、大きく開ける「空」、これがあるから川サイクリングはやめられないと、真剣に思うのである。川からは湯気が上がっていて、早朝の斜光をあいまって、幻想的である。河原広々+周辺田んぼエリアに入ると、さえぎるものがなく普段の住宅地の生活では絶対得られない至高の開放感が得られる。今の時期土手の横には彼岸花で真っ赤に染まっている。
入間川のサイクリングロードコースは上流は左岸、下流は右岸がセオリーである。だがいけるもんなら逆サイドにも行ってみたい。サイドが変わればまた景色も一変するのである。そして今回は途中から右岸にいくところをいけそうなところまで左岸で攻めた。しかし攻めてすぐ川越線と東部東上線で行く手をさえぎられた。土手上サイクリングロードが線路に突き当たり行き止まりだ。しかし両方とも土手を降りれば通過できる。質量12kくらいの自転車を持ち上げるのはまったく苦にならない。そうそう、たまにママチャリに乗ってみると、その重さを実感しないわけにはいかない。当たり前だが軽いと「こぎ出し」がすっといくが、ママチャリだとそうならない。物理の法則を体感できる。やっぱり軽いのは「正義」なのだ。
入間川をさくっと終えると次は荒川だ。これも一度走った道であり、一度走ると短く感じるという法則が全く持って当てはまった。途中で土手に座って気持ちよくおにぎりを食しても、隅田川の分岐である「岩淵水門(赤門/青門)」に着いたのは、まだ9時なのであった。
岩淵水門で少し休憩。そして9時半には隅田川左岸にアプローチができた。隅田川は荒川の旧岩淵水門から分岐して東京湾に流れ込む川だ。都心の川には珍しく、上流部は強烈な蛇行が目につくのである。さて事前にネットで軽く調べてみると、隅田川は明確なサイクリングロードがないとある。地図で確認してもそんな感じだ。だけど実際に現地に行ってみると「なんだ行けるじゃん」みたいなところも多くあるので、やっぱり現地に行ってみる必要があるのだ。何事も経験が重要なのだ。それに「初めて走る道はわくわくする」ってのもある・・・
岩淵水門から上流を眺めたところ。右側が荒川本流、左側が隅田川だ。
荒川サイクリングロードから隅田川(サイクリングロードではない)側道への入り口。
荒川の眺めの良い土手から一転、川レベルまで下がったロードに下がった瞬間、一気に気持ちがふさがった。川の増水・氾濫を防ぐためだろう、堤防壁が高すぎて、川がまったく見えない。それにロードのすぐ横が工場だったり、古い民家だったりして爽快感がゼロであった。それにしてもたぶん住宅地は川の水位レベルよりも低いと思われた。これは怖い。
こんな壁があったんじゃぁねぇ。東京を魅力的な街に変えるのなら、こういうところを何とかせい!
走り続けるとこんなに狭く人の家の裏すぐそば・・・っていうところを走ることになる。普通の人は入り込まないだろうなぁ。まあこれも経験だ。
東京都の土木事業に長らく携わった方が本を出したが、「東京を破壊させるのは簡単だ。川の堤防を一か所爆破すればよい。」というのが、身に染みてわかった。怖くて住めない。
そしてこの暗く気分を下げるロードは、橋に架かる道路を渡るのも大変であった。なぜかといえば、離れた信号までいかないと渡れないから。ああ、爽快感や連続感みたいなのが全然ない。どうしよう。
隅田川の上流は蛇行しながら荒川のすぐわきを流れたりする。そういうエリアは再開発が進んできれいに整備されている。でもそれも長続きしない。すぐに行き止まりになったり、迂回を強いられたりするのだ。でもめげることなく行き続けるしかないのだ。
走り続けているとスカイツリーにどんどん近づいてくる。しかしスカイツリーも昔ほどのわくわく感もなく、「おお、でかいな」くらいだ。そのスカイツリー、遠方からのランドマークとして利用価値が高い。荒川でも16号交差付近(河口から50qくらい)のところから遠くにかすかに見えるスカイツリーに「ああ、あんな遠くまで行くんだ。ああ、なんかだいぶ大きく見えるようになってきたぞ」とサイクリングでひとつの醍醐味である。
ある決まりを守りたいのが日本人であって、今回左岸を攻め続けたいが、一部右岸に渡らなくてはならない。そして高速の下のごみごみした歩道や川が見えない側生活道路を散々走って、気持ちが折れかかっていたとき、ふと横を見ると「のぼり」がはためていている。??とよくよくMapsを見てみたら、「両国国技館」じゃん。何年か前に「ロボコン」見に行って、国技館すげーと思ったところであった。ここでプチ休憩しよう。デジカメモニタではきれいに映ったんだかさっぱりわからないが、家でみてみると意外によく撮れていた。お相撲さんも闊歩していて、お客さんもまだ10時過ぎだというのに結構入っていく。
国技館。相撲なんて見ること無いけど、こうやってその場にいてみるとなんだか気持ちが高揚してくる。ライブで見るっていうのはそういうことなんだろうなぁ
真っ赤なロータスと国技館。いいコントラストだなぁ。
ちょっと寄り道してみたい誘惑を振り切って、さあ目指す河口はもう少しだ。
さて隅田川河口を目の前にして、実はプチ事件が起きていた。
5時半からずーっと自転車に取り付けていたスマホ(isai)は常時ディスプレイ点灯、GPS利用とあいまって、バッテリーが厳しくなっていてモバイルバッテリーから外部充電していた。そしてその後、何気にスマホのバッテリーマークが低いままなのが気になってよくよく見てみたら・・・なんとUSBケーブルがなくなっていた。ああ、どこかで抜け落ちてしまったのね。でもモバイルバッテリーは上刺しなのでなんで抜けたのかがよくわからんのである。であるから、GPSログを取り続ける必要があるisaiはリュックに引っ込んでもらって、残り少ないバッテリーで頑張ってくれ状態とした。変わって、自転車一等地の座を仕留めたのがiPhoneである。ちょっと小さいので地図見るのはつらいけど、まあいい。
さて両国を過ぎると、もうほとんど川を見ない走行になってしまう。東京の生活道路を走るのは何の楽しみもあったもんじゃない。きれいだからとか汚いからとかじゃなくて、なんの特徴もないからつまらない。まあ特徴がないのが特徴なのかもしれない。
最後は明らかに埋立地というところであちこちに運河がある京葉線エリアである。隅田川ぎりぎりを通るのなら永代橋で右岸に移るのがよいが、何気に左岸を走っていたら、清澄通りに出てしまった。しかしこの海洋大学横の橋からは東京湾が一望でき、ちょっと「うっとり」した。
そしてゴールは目の前、ここで迷い込んだのが「月島商店街」である。文化一般にえらく疎い私であるからにして、こういうところがあることを知らなかった。いま地方の商店街がどんどん消えているが、こうやって生きながらえる商店街もある。やっぱりなにか人を引き付ける「特徴」があるとないとの違いは大きい。みんなそういうところに行きたくてしょうがないのである。月島商店街は「もんじゃ」であった。それこと石を投げればもんじゃの店に当たり、どこも外で並んで待っている状態だ。
月島を抜けるとそこは晴海通りであった。ああ、晴海通りって言ったら有楽町じゃん。なんかいきなり知っているところが近くにある、この「びっくり感」がたまらない。地元でもちょっと入ったことのない道に入って行って、あっ、ここに出るの!って思ったことは多いだろう。そういうびっくり感を得たくて知らないところに入っていく自分がいる。本当は地図なんか見ないでそうするのが一番いいんだけどね。
そうこうしていると巨大冷凍倉庫群のはずれに行きつき、ここが隅田川の河口と判断した。目の前にはさっき以上に東京湾が一望できる。フジテレビ、レインボーブリッジ、浜離宮、ゆりかもめ、はたまた東京タワーもよく見える。私的にはスカイツリーより東京タワーのほうが色気ありだな。
行き止まりが好きなので、「もうこれ以上行けましぇ〜ん」ということろで一枚。
一応中央ちょっと下にある青ポチが現在位置。走り始めから86.6km。まだまだ序の口だな。
レインボーブリッジが目の前にどどどどど〜んと見えるのは壮観である。
ちょうどお昼過ぎに河口着であって、やけに早い。というか、これほど早いゴールだとこれからどうしよう?と非常に悩む。でもたまに早く帰るのもいいだろう。夕方になると電車も混みそうだし、帰ってゆっくりしたい、、と帰路に就くことにした。しかしこのあたりから電車に乗るのも能がない。そうだ、新宿まで行ってしまえ。
山の手内は意外に坂が多いのだ。自転車はとういか自転車に乗った私はめっぽう坂に弱い軟弱ライダーである。なので、なるべく近くて坂のないルートを選び、帰路は晴海通りから四谷経由新宿通りルートにした。基本的に大通りをドン・ドンという感じで迷いようがない。
誰もが思うだろう、自転車は案外車といい勝負をする、っていうか、混んでいるところは明らかに車より早い。河口から晴海通りまではすぐであり、さらにすぐの勝どき橋を渡ると、ここからはもう銀座エリアである。よれよれの自転車おっさんはちょっと目立つかもしれない。走る車は「ここは日本なのですか?」というくらい欧州車(特にドイツ車)が多い。有楽町を過ぎて日比谷公園を過ぎて警視庁を過ぎて国立劇場を過ぎて因縁のFM東京の角を曲がる。
勝どき橋ってあがることあるんだっけ? しかしこのリベットがたまりませんなぁ
さすがに東京都心だと標識もボリュームがあるのである。
国立劇場って入ってみたいけど勝手にはいれないんだよね?はいれるのかな?
あとはすいすい走って、テング熱騒ぎで閉鎖している新宿御苑を過ぎるとそこはもう新宿南口だ。結局隅田川河口からは1時間もかからずに新宿まで到着だ。やっぱり自転車は早い。新宿駅で小田急線にもっとも近くアプローチできるところは南口である。その南口のめちゃくちゃ人が往来している横で、自転車を折りたたんで大きなバックに入れ込む私はちょっと浮いていた。というかだれも気にしていなかったかもしれないけどやっぱり浮いていた。
こんなに人がいるところで・・・
中心の青丸が新宿駅南口。周辺は真っ赤かで渋滞だらけだけど、自転車はそんなのかんけーねー(ちょっと古い)である。
96.8kmだから隅田川河口から10kmくらいで新宿に着いちゃうってこと。すごく近いじゃん。東京って以外に小さいから自転車で十分ってことだな。しかし100kも走っていないのでまだまだ余裕である。
新宿から町田までは快速特急で超スピードであった。輪行する人のマナーとして邪魔にならないところに自転車を置くのだ。今回は先端車両の左角に置いた。右角と中央は先頭は外を見たい子供や鉄ちゃんのエリアである。電車の中はめちゃくちゃすいているのだが、やっぱり自転車のそばで立っているのがルールである。
帰ってきて体重計にのったら家を出るときから3kgも減っていた。あまり熱くなかったこともあって水分補給500mペットボトル2本もいかなかったからか。その後家で結構飲んだが、翌日は1kgしか増加していなかった。なんだかそっちのほうもうれしいサイクリングであった。
さえぎるものの無い開放感、広大な田んぼや河川敷、自然そのままの姿、人がほとんどいないのんびり感・・・などから、私はやっぱり上流が好きである。が、東京のベイエリアも魅力だ。今度はベイエリアだけを攻めてみるのも面白いかなぁ・・・