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■■■ 娘よ、ごめん! ■■■

その金曜日は午後を全部つぶして部内の報告会が開かれていた。まあ主催者に近い側でもあるので電話が鳴るとチトまずいってことで、個人PHSも会社のPHSも事務所に置いてきた。そして事前の準備が良かったのが、自分的にはうまくいった発表であり、心地よい充実感を感じながら席にもどると個人PHSに3件も着信履歴があったのだった。

「う〜ん、知らない番号だ。」

PHSに電話がかかってくるなんてめったにない俺なので、これがかの有名なワン切り勧誘か?なんてのが一瞬脳裏をかすめたのは事実である。けど3回もかけてくるんだからやっぱり用事があるんだろうなぁ?と考えるのが普通であろう。まあ「用があるならまたかけてくるだろう」と、全くもって電話を有効活用していない俺なのだ。

 さて週は変わって月曜日。会社について早々の8時過ぎに、今度は会社のPHSが鳴った。「ヘンケルのTです。」おお、ヘンケルに買収された普通に言えばロックタイトの営業Tさんである。3年前に鈴鹿で御一緒させてもらい、自分の年のみならず、お互いに二人いる子供の年まで一緒なんていることもあり、マブダチになったのだった(俺が勝手に思っているだけです、Tさん)。そしてTさんは開口一番「今週末のF1いけますか?」とな。”F1”と聞くと、パブロフの犬と同じく条件反射的に”ハイ”という俺なのをTさんはよくご存知なのだな。しかし「はい」と言った後にすげー大変なことを思い出した、というより

知っていて「はい」と言った確信犯

なのだよ。俺は。なぜならばその週末の土曜日、F1は決勝のグリッドを決める重大な予選の日であるが、我が家でもそれに勝るとも劣らない重大行事の日なのだった。それは

幼稚園(年中の娘)の運動会!

この一大イベントをまえにして、どういう風に子供が動くのか(校庭でどう並ぶのか)を家族で事前調査して、来る運動会でベストな撮影ポジションを得るべく、シミュレーションをたくさんしてたのさ。なので、”家に帰るのが憂鬱に思う”ことなんてない俺様の家に帰る足取りは大変重いものだった。さて家に帰ってもやっぱりかみさんに切り出しにくくすげー憂鬱、言うタイミングがなかなかつかめないそして子供が寝て(だって起きているときには言えないもんね)しっとりと切り出した。声のトーンは-6dBだったのは言うまでも無い。

俺:「あのぉ〜、ちょっと話があるんだけど・・・週末なんだけど・・・」

嫁:「えっ、F1?」

なんと察しがいいヨメなのだろう。これであとは子供だけだ。で、後日娘にしんみりと話したら「お父さんは出張行ってらっしゃい!」と何事もなかったようにケロリと言われたのは救いだった・・・というより「もっと悲しんでくれよぉ:って感じ。ということで、さあ、切符も買って出発だ!


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