■TOP > パドックで楽しむ

■■■ 第64話【残念】 ■■■

 先ほどいらっしゃったM事業部長が再度いらっしゃった。

 「佐藤さん申し訳ありませんが、3時半にここを出ますのでよろしくお願いします」とな。

   うぉ〜、まじかぁ?1周1分40秒弱だから・・・

 なんてこった、ちょうどファイナルラップの前じゃないか!

 と、ちょっと顔に出てかもしれないほど狼狽した俺なのだった。ここまで来てチャンピオンの瞬間が見れないなんて悲しすぎるぞ。


 ぎりぎりまで粘ったが、約束の3時半になったらきっちりとM事業部長が現れた。うーん、残念。レースはと言えば、トップ快走中のハッキネンがまさに最終ラップにはいるところだった。
「いやよいやよ、やだやだぁ、しなしなぁ〜〜」と駄々をこねるわけにもいかず、去りがたき場所を去っていくのであった。

 ハッキネンの表彰台、松井のお立ち台、クイーンの武道館などと同じように、そこが自分の家のようになじんでいる俺にとってのピットボックスから出て、緊急レスキューしてくれたトイレの前を横切り、ゲートを越え、朝のわくわくとした気持ちで通ったホームストレート下のトンネルから出て、グランドスタンドの下(観戦中の人に注目される場所だ)に来たとき、大歓声とともにハッキネンがチェッカーフラッグを受けていた。デイブ・リー・ロス風のハッキネンの私設応援団長も心に来るものがあっただろう。



 グランドスタンド前で金網越しのフェラーリメカニック。ドライバーズチャンプは逃してしまったけど、コンストラクターズチャンプはおめでとう。



 俺はと言えば一瞬立ち止まり、フェラーリ/アーバインのチェッカーを写真に収めた・・・と言いたいが、これでは全然収まってないなぁ。右に赤いノーズがちょっと見えるでしょ。



最終・鈴鹿ではフェラーリに4ポイント負けていたし、シューマッハの強烈ブロックがあるだろうと予想された状況で、みんなマクラーレンに招待されていたため口には出さないが、「フェラーリのアーバインが優勝しそうだな」と、思っていただろう。ハッキネンは自力でチャンピオンになるために、鈴鹿で優勝することだけを考えていただろう。それをその通りにするなんざぁ、

すごい、すご過ぎるぞハッキネン。



←前の話 ↑ 目次へ 次の話→