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■■■ レッドスペシャル写真から形状を読み下す ■■■

 レッドスペシャルのモデリングが困難を極めるのは、撮影した写真からでしかサイズを知ることができない点である。これが今もそしていつまでも「悩み」の元凶になるのである。そしてそれは、レッドスペシャルをキチンと撮影した画像が豊富に出てきた今だからこそ、出てきた悩みでもある。以前のように「この画像しかないよね」となれば、その画像だけを頼りにすればよい。

 今回はこの写真からの幾何学検証でレッドスペシャルを解析しててみたいと思う。写真の特徴点から幾何学的計算にどこまで迫ることができるのか? これができれば少しは日々の「悶々とした」時間が減るのではないか?と思うのである。

■■■ 撮影位置による写真の見え方 ■■■

 世の中のレッドスペシャルマニアを狂喜乱舞させてくれたX線透過写真を見てすぐ気付くのは、表側のバインダーと裏側のバインダーが重なって見えていなことである。裏側のバインダーは写真上では内側に見える。これは写真の性質上(いわゆるパースペクティブ)「遠くにあるもの(裏バインダー)はより小さく見える」ということからくる。さらにこの「小さく見え度合」であるが、撮影中心から遠いほうがより大きくずれて見えるのである。

 以下これらの検証をレッドスペシャルの外形をかたどった簡単なモデルと赤緑のグリッド線を例にして確認してみよう。グリッド線は400mm範囲を50mm間隔として描いている。赤線が上(近い側)、ボディー厚みに相当する赤緑線間隔は39mmとした。


◇X線写真のボディー部分(バインダーがずれている)

◇解析のベースとするモデル(赤が表面、緑が裏面)


撮影距離による影響

 まずカメラとギターの距離を変えた時にX線の絵はどうなるのか?を検証してみよう。

 カメラ撮影位置をボディー中央部真上、撮影距離を350mmと1,000mmの距離で比較してみる。まずカメラの撮影距離を350mmにしたもの。赤が表側のバインダ、緑が裏側のバインダ、水色点が撮影中心である。裏側のバインダは内側に大きく入り込んで写っている。撮影中心がギター中心なので、ボディーサイド部は可視できない。赤緑ライン(ギター表裏)のスケールは大きく変わっているが、画像の歪みは無い。




 次にカメラ撮影距離を1000mmと遠ざけてみる。表裏でのバインダーの大きさ違いは圧倒的に少なくなっている。




 以上から分かるのは、なるべく遠くから撮影した画像ほどギター表・裏のずれが少ない、ということである。まあこんなことは改めて言わなくても感覚的にわかる事である。実はこの後に「透視視点」という点で幾何学的な計算を示してみるが、まずはその前に簡単事例を示そう。



事例:レスぺX線撮影距離計算

 X線写真ではトップバインディングに対しボトムバインディングが「写真上」内側に写ってしまうことを示した。この写真上の上バインディングの見かけ上のずれた寸法から、撮影距離を計算してみよう。必要な寸法はレスぺ厚み、ボディー中心からバインディングまでの距離、バインディングの厚み方向幅、それとX線写真に写っている上下バインディングのズレ距離である。実はX線写真ではボトムのバインディングのトップ側位置で写っている。であるから、計算に必要な厚み方向寸法Dは、「ギター厚み‐ボトムバインディング厚み方向幅」となる。言葉では著しくわかりにくいので以下の画像を見てほしい。

■カメラとギターの距離 :H(求める数値)
■トップバインダートップ側〜ボトムバインダートップ側距離:D(36mm)
 (バインダー幅4mm、ボディー幅40mmより算出)
■撮影中心〜バインダー外縁部距離:W(176.5mm)
■X線写真上トップ/ボトムバインダー見かけ上距離:a(6.5mm)



 上記をもとに求めた撮影距離 Hは915mmと出た。なんだかそれっぽい数字でありちょっとうれしいかも。

撮影位置による影響

 カメラ撮影軸(撮影の中心垂直線)がギターのどの部分になるかも重要である。特に撮影軸がギター中心からから離れた場合、ギター厚みによる撮影距離の違いで見える画像の位置や大きさが変わるからである。

 今回はギター撮影中心点を矢印のように右上方向にx:200mm、y:200mm移動した(撮影距離は300mm)。シェイプの大きさと位置が変わっているが、シェイプの歪みは無いことが分かる。つまり撮影中心がどこであっても同一平面状である限り正確なシェイプが得られるのである(但しレンズの収差による歪みの影響は無視している)。ちなみに、撮影位置がボディー外側に移動したことで、当然だが向かって右側のボディーサイド部が見えている。これもあとのレッドスペシャル生画像解析のとき解析する。




被写体傾きによる影響

 こういう形状把握的撮影は被写体とカメラの垂線方向を一致させる必要があるが、安易に撮影すると被写体が傾いてしまう。いや安易に撮影しなくても治具などを利用しないとなかなか垂直にカメラを向けられない。レッドスペシャルの写真も大半がそういうものなので注意が必要だ。今回はギターを10°傾けてみた。

 まず撮影軸ははボディー中心を狙い撮影距離300mmで見てみよう。右のグリッドを見ると良く分かるが、シェイプだけを見ると大きく歪んでおり、このままではトレースに使えない。ボディー形状は分かりにくいが、右側の膨らみが大きくなっているのが分かる。




 次に撮影距離を1mまで離してみると、歪みはだいぶ収まる。しかしボディー左右でのボリューム感が違うのでトレースにはやっぱり使えない。




 参考に撮影距離を300mm、さらに撮影中心を右上200mm/200mmにしてみるが、まあ問題外ですな。




撮影における総括

 撮影された写真から寸法を採寸するために知っておかなければいけないのは、以下の3項目となる。
【1】カメラから被写体までの距離
【2】カメラ垂線の被写上の位置
【3】カメラ垂線に対する被写体の傾き
 これらを考慮したうえで画像の解析を行うことが重要である。っていっても実際は難しくてなかなか思うようにいかないのが世の常であるのだよ。









少しアカデミックに写真から寸法を導く法

 さて実際の写真から寸法を導く場合の考え方、補正値の求め方を以下に示そう。レスぺ/オールドレディーの写真も今でこそたくさん得られるようになった。その写真から直接寸法を測りたいが、少し写真の仕組みを知っていれば補正を行い、リアルな部品寸法が得られるのである。

 写真撮影時の条件はその後の解析/寸法推定に大きく影響するため、撮影時のカメラと被写体の位置関係を3つの条件別に分け、実寸法推定するための手法を説明する(予定)。



〇点透視が基本

 さて解析するときに重要なカメラと被写体の関係だが、1点透視から3点透視の3つに分類される。1点透視は上記投射面に対し被写体3面の内1辺が被写体と並行でないものをいう。1点透視はきちんと撮影されたX線写真などがそれに相当する。同様に2辺が被写体と並行でないものが2点透視、3辺全部が平行にならないものが3点透視である。以下の模式図では左から、3点透視、2点透視、1点透視である。各キューブには投射面に並行にならない「辺」を赤で記載しているが見えにくいですな。


俯瞰図

カメラから見た並行光視(CADでは無限遠からのビューとなる)


 @この配置されたキューブの各頂点からカメラに向けて直線を引く
 Aその途中に投射面を置く
 B先ほど引いた直線がこの投射面と交差する点を結ぶ
そうすることで写真に写る姿(黄色のライン)が導けるのである。以下にGIFアニメで見てみよう。





カメラから見た並行光視

 描かれた投射面上の画を右に置く。写真では各キューブは黄色の線で書かれたように見えており、この投射面上画の寸法から元のキューブの寸法を導くことができる。

 以下に1〜3点透視における寸法の算出法を考えるが、この「〇点透視」はアニメーション作図の人たちの解説が詳しくて、きちんと理解した人はそちらで勉強すべし。





正面から撮影した画像を利用する場合(1点透視)

 解析上最も簡単で基本となるのが、この1点透視である。これはレスぺ/オールドレディーを正面から撮影した画像の解析などに威力を発揮するだろう。ブリッジやノブのようにハイトのある部品、内部構造やバインダーなどのX線写真での奥行き方向解析にも有効活用できるはずだ。下の説明にあるように、単なる比例計算でできちゃうところが素敵である。唯一の欠点は「カメラと被写体」の撮影距離Lが分からないといけない点である。X線写真だけは、逆算的に1mと計算できているのだが・・・





俯瞰図

 1点透視で解析した事例を以下に示す。

●事例1:右側チャンバー深さ(赤)
・カメラから被写体までの距離 L:求める数値
・撮影中心から測定部位までの距離 W:147mm
・深さ方向距離 D1:37mm
・撮影上の深さ方向相当距離 ▲X1:5.5mm

何を既知として、何を求めるか?は自由であるが、今回は撮影距離Lを求めてみることにする。X線写真から計測した距離寸法と、チャンバー深さ(37mmとした)から撮影距離は952mmと出た。以前にも別部位で計算したときに915mmと出たのでおおよそ計算は合っていると思う。

●事例2:ブロックボート上下締結木ネジ長さ(青)
・カメラから被写体までの距離 L:952mm
・撮影中心から測定部位までの距離 W:157mm
・深さ方向距離 D1:求める数値
・撮影上の深さ方向相当距離 ▲X1:6.0mm

事例2としてボディー向かって右端にあるブロックボート締結用木ネジの長さを考察してみる。事例1でも求めた撮影距離を利用し、求めるのはD1(深さ方向距離)とする。X線写真では木ネジがきちんと写真上で傾いているのでその距離を▲X1として利用する。結果D1は38mm と出た。本当かどうかは定かではないが、ブロックボードの厚みが19mmとすれば、下側ブロックボードを突き破らないギリギリのところですな。まあ多分に誤差を含んでいるだろうが、こう利用すればいいという事例なので、違っているからとクレームなどよこさないように。




1辺のみ斜めに傾けられた画像を利用する場合(2点透視)

 2点透視を考える。例えば単体ギタースタンドに立てられているギターはテールエンドが前にヘッドが奥側に傾けられているだろう。この時床面に並行にカメラを構えた場合、ギターカメラに対して角度θがついている。そしてボディーは近いので大きく、ヘッド部は遠いので小さく写ってしまう。この状態が2点透視である。




 では2点透視で解析される事例も示してみよう。今回はレスぺ本に掲載された全体写真を例に、これがどれだけ傾いて撮影されたか?の考察を行う。ではレスぺ本写真に登場いただこう。



 一見何の問題もないように見える写真であるが、この写真は少しだけ、ギター本体がカメラ撮影垂線に対して傾いているのだ。これを知らずにトレースのベース図にすると、レスぺ/オールドレディーのボディーシェイプなどに影響が出てきてしまう。なのでどう傾いているのか?を知っておく必要があるのだ。

 そしてこの写真はX軸方向(ボディー幅方向の軸とする)、Y軸方向(トラスロッドを軸と思えばよい)の両軸に対して傾いている。なので正確に言えばこの透視は3次透視になる。その傾きは微小なものであるが、分かりやすくするために、どう傾いているかを、大げさに(X/Y軸共に10度)傾けたgifアニメを右図に載せておく。




 ここでは簡易的にX軸中心にのみ傾いていると仮定し解析をしてみよう。右に基準となる部位に対するズレを測ったものを載せるが、だいたい撮影中心は14フレットであると思われる(ここでいきなり”だいたい”とか”思われる”なんていう数字を無視した言葉が出てきてしまうことはお許しを!)。そして以下に各々の数値を列記する。

撮影中心14フレット
14フレット〜ボディーエンド距離A1447.7mm
14フレット〜0フレット距離A2338.6mm
(写真上)14フレット〜ボディーエンド距離P1444.4mm
(写真上)14フレット〜0フレット距離P2340.4mm

計算の結果、この写真は「撮影距離1650mm、ギター傾き1.5度」で撮影されたとなった。どうかな?



がっつり傾けられた画像を利用する場合(3点透視)

 (執筆中というか、書ける自信がない・・・)






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