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■■■ ラップ塗装とフロイドローズ ■■■




■■■ 心が満たされた ■■■

 インターネットでギター塗装を調べていたら何やら面白い塗装法が見つかった。それは「ラップ塗装」。簡単で効果が高そうだ。今まではフランケン化と単色塗りだけに専念してきたので、こういう塗装をやってみたい気持ちで心が満たされた。

 インターネットでギター部品を調べていたら、何やら中華製フロイドローズ(もどき)が1400円。ジャンクギターから外したパーツとか、友人にもらったものとか、フロイドローズはいくつか持っていたが、どれも何かが欠けていた。よし安物ギターにフロイドローズ加工という、新しいジャンル開拓だ、と心が満たされた。

 インターネットでピックアップを調べていたら、何やら中華製ハムバッカーが2個で1200円。評価もすこぶるいい。今までフランケン化の際のハムバッカーとかはヤフオクで入手していたが、こっちの中華製の方が易いじゃん。実はこんなにギターを持っているにもかかわらず、ストラトにハムバッカー搭載の、いわゆるH-S-Hタイプのギターは持っていない。よし初H-S-Hだと、心が満たされた。

 ということで、3つのアイテムに心がいっぱいになり、改造の準備が整った。今回は実験的要素が強いので、まあ失敗しても泣かないのである。さあ成功するのだろうか?



■■■ ベースモデル ■■■

 ずーっと前にジャンクを買いあさり始めた頃、黒+ローズ系ネックという、一番ジャンクでは多いと思われる組み合わせのギターを買った。なぜかといえばフランケン化に燃えていたころだから。メーカーはFORMESTER。ブランドすら見たことのないギターで、家では改造のベースにされることもなかった。このFORMESTERを今回の生贄ににすることにしよう。理由は三つ。

 ひとつは、ボディーが黒なこと。ラップ塗装は黒ボディーに塗装を施すのだ。もう一つはネックのヘッドナットが壊れていること。フロイドローズ加工はネックナットを外して、そこのヘッド側を削り落としてしまうのでナットが壊れているのがちょうどよい。最後は、ボディーの加工がH-S-Hであること。一括くくりである弁当箱形状が多い安物ギターであるが、じつはこのFORMESTERはH-S-Hでボディーが加工されていた。なんかやるじゃん。

 長らく放置されてきたFORMESTERはいくつかの難があった。一つは指板に貼った識別用のシールのため日焼け跡が目立つこと。ピックガードが汚いこと。何とかしないといけないね。




◇一般的な安物ギターである。買ったときはペグが一つ壊れてて袋に入って同梱されていた。

◇まず買ったらすぐバラすが信条である。



■■■ フロイドローズ(もどき)ユニット ■■■

 ずーっと前に買ったフェルナンデスについていた通称「タケウチローズ」を利用したかったのだが、ブリッジユニット駒の一つが壊れていて使えない。また友人からもらったジャンクなユニットもあれが足りないこれが足りないと使えない。ならば、とアマゾンで探ると1,400円の中華製もどきがあった。不具合を覚悟で人柱となってみよう。

 フロイドローズユニットにそう詳しくもない私であるからフロイドローズの仕組みを理解することが先決である。よくよく見ると案外メカメカで面白い機構である。ファインチューナーなんてよく考えられているね。

 さて中華製フロイドローズもどきであるが、それっぽいが細部でちょっとというところがある。ます好みの問題であるが、ファインチューナー用のスクリュー頭がメッキになっている。やはりここは黒にしてほしかった。次、これは明らかに設計ミスであるところだが、ネックのナットロックユニット。斜めの弦が沿う部分にタップがネックに対して垂直に切ってある。このまま使うと、弦を面で受けるのでなく点で受けることになる。これ再タップだ。最後に、ヘッド部のテンションバーがついてない。別途購入である。


◇手持ちのフロイドもどきユニット。FernandesタケウチローズやらBC Richゴトーローズやらあれこれあるけど、恋人仕様の黒ローズにはびっくり。

◇1400円中華品。上に書いたように構造を理解していないでコピーすると間違えちゃうんだなぁ。でもわかる日本人が一人協力しちゃうといきなりコンプリートコピーになっちゃうんだろうなぁ。テンションバーは別途購入。アームのスリーブ部パーツは2セット買って違うものだったぞ。




■■■ ネック加工 ■■■

 もともとナットがついてなかったので「遠慮」なんてもの自体が存在しない。なのでどんどん刃物を入れる。高さだしは慎重にしなければならないが、まあ最後はSIMはさめばいいじゃん・・・って逃げられるからね。


◇あたりをつけてカットソーで切る。私の唯一の苦手な工作は「のこぎり作業」なのだ。

◇やっぱりあまりきれいじゃないけど、ペーパーかけるから・・・



■■■ ボディー加工 ■■■

 ギターに大胆に刃物を入れるのは過去何度もやっていることであり、かつ安物ギターであるから何の躊躇もないが、それでも準備は必要である。まずは以下の二つのテンプレートを作成する。

・フロイドローズの外形寸法採寸 と 加工用テンプレートの作成
・ブリッジアンカーボルト用穴あけテンプレートの作成

そして刃物をいれるのだが、この時フロイドローズユニットの位置をどこにするか?が重要だ。ネックを取り付けて、その時の0-12フレット寸法の2倍(ストラトだと大体648mm)の位置を記録する。フロイドの駒を一番ナット側に寄せて、その時の弦接触位置を先ほど記録した位置から1mmくらいエンド側に寄せる。この位置に合わせてテンプレートをボディーに貼り付け、ガーっと削る。


◇愛機「ボッシュ」トリマで削る。

◇めちゃくちゃ大きな音と大量のおがくずに気がめいる作業である。しかし安物ギターであるからして「材」もあまりよくないっぽく、木が割れちゃうのには参ったぞ。



■■■ ピックガード加工 ■■■

 フロイドローズ加工だから、ピックガードのブリッジにかかる部分をちょっと削らなければならない。それよりも今回はロックギターテイスト満載となる予定なので、S-S-Sなんてのではなく、H-S-Hという、ハムバッカーをフロントとリアに設置することにした。白黒ゼブラのハムPUがアマゾンで1,000円ちょっとだった(今は1,400円くらいに値上がりしている)。このPU、フロントとリアの巻き線数が違うっぽい。フロントは通常のハムに近いΩ、リアは出力を稼ぎたいからか高音を抑えたいからかΩである。これはPUの背面にB(ブリッジ)N(ネック)と刻印されているので間違いようがない。

 さてそのPUのサイズを測り、やはりテンプレートを作ってピックガードを切りぬくのだ。


◇テンプレートを載せて、これから削られるのを待つピックガード。

◇削り終えたピックガード。おお、きれいに削れたぞ。だけどピックガード自体がえらく汚い。



◇実はPUをピックガードに固定する孔をテンプレートに開け忘れたのだ。しょうがないから細心の注意を払いセンターをけがきピンバイスで孔あけした。

◇それに合わせてピックガードにも孔あけ。



◇実はピックガードは大きなフロイドローズとの干渉を回避するためにここも削らないといけない。

◇やっぱりテンプレートがあるときれいに削れるのである。


 実は何となく思っていたのだが、ピックガードが汚い。それに識別用シールとか貼っておいたら、焼けるわ、ベトベトになるわ。さらにマジックで中心線とか書きまくった。つまりこれをかっこいいピカピカピックガードにするのがしんどいのだ。なので「マット仕上げピックガード」にした。1500番で砥いた。これは後の話につながるのだ。



■■■ 塗装 ■■■

 やっと塗装だ。でもいきなりラップ塗装にいけない。ボディーは黒だからいいのだが、ネックヘッドもマッチングカラーにしたかったので、ヘッド部分にマスキングして黒を吹いておくのだ。合わせて塗装のノリを良くするためにボディーも表面に軽くペーパーをかけておく。


◇ヘッドは真っ黒にする。それよりもマスキングが一番面倒なのだ。でも塗装はマスキングでクオリティーが決まるってこともあるから手は抜けん。

◇塗料のノリをよくするために表面を600→800→1500くらいで研いでおく。


 さていよいよラップ塗装。ラップ塗装を簡単に言っておくと、サランラップ(もしくはビニール系)にシルバーを拭き、それをポンポンと対象物(この場合はギターボディー)にあてていく。その模様がいい感じなのである。ポンポンのやり方やラップのふくらみ感で模様の粒度が変わる。そして出来上がったものは既存の塗装とはまったく違ったものになった。正直「はまる」。


◇まずはサランラップにシルバースプレーを吹いて・・・

◇数秒落ち着かせて乾かないうちにボディーにペタペタ押し付けるだけ。押し付け方やラップの開き具合とかで模様が変わる。つまり同じものが二つとない。



◇とりあえず仮組みしてみたがシルバーのままでも良さげだなぁ。シルバーのところに色が乗る感じなので、シルバーを多めにしてみた。

◇マッチングヘッド仕様にしたので、ヘッドも同じようにラップ塗装。ロゴなんていれないで改造感を強調してみよう。




 なんかこのままでもいい感じがしたが、まあ実験機なので色も載せてみよう。大量のマクラーレンを作ってから半年、模型に触る気がしない日が続いたが久しぶりにハンドピースの登場である。この状態で吹くのはいわゆる「キャンディーカラー」である。模型用で言うとクリアーレッドとかだ。なぜかといえば、普通の色を拭くと下の模様を消してしまうから。

 色は赤系統とした。意外に「ワインレッド」が好きなのだ。会社の開発品もワインレッドで結構評判よかったし。ギターの場合サンバーストなどの、2トーン塗装が一般的なので今回も中央はイエロー系、周辺に行くに従いレッド系としてみた。

 しかし吹き始めてすぐに分かったのは、クリアー系だと色が乗るのに大層時間がかかるってことだ。これじゃあいくら時間があっても足りないと思い、思い切って通常のレッドで塗装してみた。模型用なので隠ぺい力もそれほど強くないし、それなりに薄めて吹いているのでキャンディーカラーにするのにちょうどいい感じである。

 程よく塗装が終わって2週間落ち着かせ、最後のクリアーを拭いた。全体を数回に分けて吹くのだが、一度目がいい感じに吹けて、乾燥させて、2度目を吹こうと思った刹那「うっ!」とうなった。

「マット(つや消し)じゃん・・・」

 大量に保有するスプレー缶の適当なクリアーを取ったら、実はつや消しクリアーだったのだ。しまった。でもこの上からグロス(つやあり)で吹けばいいや・・・と思ってみたが。実はこのマット調の塗装が案外渋い。なんかラップ塗装にすごくあっている感じがする。ピックガードもマット仕上げ状態だし、いいんじゃね?(この言葉は嫌い!)とつぶやき、マット化決定である。次回はグロスで仕上げてどっちの方がいいかを判断してみよう。


【図19】

【図20】




■■■ 部品組み付け ■■■

●ロックナット
 ロックナットは下の写真を見てわかるように、ペグ方向にテーパーがついて固定されるようになっている。が中華ローズはテーパーの垂線方向ではなく、指板垂線方向に留まるようにタップが切ってある。明らかに設計ミス。しょうがないから、テーパー垂線にタップを切りなおした。意外に行けるね。ダメだったらM径を一つ大きくしようと思ったよ。


◇ネック幅とピッタリだった。

◇最初はテンションバーが付属していなかったのでなしでもいけるかと思ったが、やっぱりロックナット部分を無理なくロックするために弦のテーパーと合わせる必要がある。別途購入した。


●ブリッジアンカー
 実はこの部品の組み込みに思案した時間が一番長かった。なぜかといえば、アンカーの径が10mmだったから。手持ちのドリルチャックは6mmまで。ではと、フェルナンデスのボディーに埋まっていたアンカーを抜き出したが8mm。しょうがないので10mmまでくわえられるチャックと9.5mmが入っているドリル刃セットも買ってしまった。我が家にドリル刃セットがいくつあるんだろう? しかし心配していたようにボディーのリアPU用座ぐりがアンカーに近すぎる。8mmのアンカーでもぎりぎり。孔が切れてしまいそう。それじゃぁアンカーとしての機能は果たせない。ということで、結局どこかで入手したM5のタッピングアンカーとなってしまった。まあ遠回りだこと。


◇左がフェルナンデスについていたタケウチローズのアンカー8mm、右が1400円中華ローズのアンカー10mm。結局どっちも未採用。

◇アンカーの位置がぎりぎりなのがよくわかると思う。画面右のアンカー部は、木が割れてしまったためちょっと危うい。


●フロイドローズ組み込み
 フロイドローズを組み込み裏のテンションスプリングをつけたら、アームアップでスプリングがボディーに干渉した。フロイドローズもどきなので、ベースブロックの背が低いのである。これはしょうがないのでボディーを削って対応。


●アーム固定
 最後の最後になる、トレモロユニットの肝なアームの取り付けだ。しかしこれも難があった。スリーブの径とアームの径に0.8mmくらいの差があった。これじゃあいくら締めこんでもガタが出る。アーミングでガタがでたんじゃトレモロユニット搭載の意味がない。5秒思案の後、とりあえず0.5mmのプラ板を挟んでみた。おー解決じゃん。とりあえずやってみて状況を調べようと思ったが、それでOKだった。やってみることが一番である。







■■■ 完成 ■■■



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