■TOP > Red Specialを解析 > (新)オールドレディーのモデリングと考察

■■■ Red Special(Old Lady)の解析史 ■■■



 家族から「細かすぎ」とか「理屈っぽい」とか「こだわりすぎ」と呼ばれているお父さん諸氏(レスぺに興味を持つのは大体にしてオッサン世代)は結構いるのではないか?と思う。技術系の人はこいう理屈っぽい人が多いと思われ、まあ女性に嫌われる素地を十分に持っているのである。自分はそうじゃない論理的に語っているのだ!と思っていても、相手が思ったというその「事実」は変えられない。ちなみにマイ格言集の中には「過去と事実は変えられない」というのがあるのだ。

 さてこんな性格であるからにして、Burns改造を決意しても「ここ、どうなっているのか分からないぜ」と、なかなか手が出せない自分がいた。しかしはたと気が付いた。「結局Burnsを中身からしてコピーする必要はないじゃん、見栄えだけ似てればいいじゃん」。これで気が楽になった。のだが、WEBでオリジナルとの違いとか書き出したら、オリジナルが分かっていなければならないので、やっぱり解析となる。そして永遠の解析地獄に陥っていて、それはまさに現在進行形なのである。

 レスぺ本の登場によってこの解析に終止符が打たれるはずだった。がそうは問屋が卸さない。確かに分からないところは大幅に減ったが、それでもブライアンと天国にいるお父さんハロルドしか知らないことはまだまだあるのだ。レスぺ本コンプリートを出してほしいなぁ。

 なので、世界に1億人はいると思われる(うそうそ)レスぺ解析マニアはまだまだ枕を高くして寝られないのである。




第1次解析(フライヤーさん改修画像ベース)

 Burnsの改造を手がける前、当然であるがオリジナルなレッドスペシャル(オールドレディー)を徹底的に調べた。しかし、海外では「スクラッチプレート」と呼ばれるピックガードをはずしたくらいでは、野球拳で最初に負けてジャケットを脱いだくらいであるからして、その全容はまだまだ分からないのがレッドスペシャルなのである。表面のマホ薄板をはがし上下のブロックボードを分割したいところであるが、鈴木奈々バリに「そんなのムリムリムリ!」であって、つまり全くのお手上げなのであった。しかし「お手上げだから作れません」ではあまりにも情けなさ過ぎる。

 そんな時、フライヤーさんのレッドスペシャル改修時の低解像な数枚の写真を発見した。これはまさにお宝画像であった。野球拳で3回くらい勝った感じで、今までその内部を見れることのなかったレッドスペシャルが、まとっているものを脱いで中を見せてくれている。中学生が道端で〇〇本を拾ったときのドキドキ感よろしく、昼夜朝夕この画像を見まくった。そして見れないところは想像力をフルに発揮してレスぺを理解した。これを第1次解析とし、この解析でモデリングしたものをモデリングver1とする。このモデリングver1はボディー編とネック編に分けまとめてある。

 今となっては「ぷぷぷぷぷ・・・」と笑っちゃうくらいな解析であるが、当時自分の中で考えていたことはそれなりに面白く、「ぷぷぷぷぷ・・・」となってみたい方は以下のアーカイブを参照されたい。

●第1次 ボディー解析
●第1次 ネック解析





第2次解析(X線透過画ベース)

 さて2007年に購入し2008年から試行錯誤しながら始めたBurns改造も2011年には何とか終了し、その完成品を見るたびニタニタする自分がいた。しかし、心の隅、ほんの隅っこにほんの少しだけ、「やっぱりオリジナルのモデリングができてないよなぁ・・・」という無念感があった。そのほんの小さな無念感は日に日に大きくなってきて無念感というより「焦り」に近くなった。

 そんな2011年1月、世界のレスぺマニアから崇拝されるKzギターにお邪魔する機会があった。そこで見せていただいたフライヤーさん改修時の生写真やX線写真にノックアウトされた。そう完全なるノックアウトだった。負けたボクサーの気持ちはこういうものだろうと思う。一番ショックだったのが、X線写真。レスぺが上下2層というのは何となく知れていた話だったが、それは当然接着だろうと思っていたのだが、実は「ねじ留め」なのであった。そしてその上下2層構造は2枚と呼ぶのが不適切なほど「フレーム構造」であった。結局自分の1次解析したのは見える表面的なところだけじゃん、素敵な男は内面が素敵だからだぜ、それまで「解析」なんてWEBに書いていたことが恥ずかしー!と顔を覆いたくなるような現実を突きつけられた。

乾杯!じゃなくて完敗

 あまりに完敗するともうやる気が起きないというか、しばらくは廃人な生活を送ることになる。有名模型屋で自分のレベルと違いすぎる作例が飾ってあってしばらく模型をつくる気にならなかった時の気持ちである(事実です)。

 さて廃人生活から脱し始めた2011年11月のある日、海外のレッドスペシャルBBSでレスぺX線撮影画像を見つけた。Kzさんで見せていただいた写真のようであるが、冷静に観察してみるとなぜか違う。微妙に違う。多面的に判断するとどうやらそれはレプリカモデルなのであった。それを見抜く眼力はついていたのがうれしいのであった。何事もやっているうちに眼力は向上するものである。このレプリカ、「どうやら本物にすごく近い」ということもが分かった。しかしこのレプリカ、構造的には近いのだがいつもの通りフォトショップでアルファをちょっといじってオリジナルに重ねてみると、ほとんどのパーツはオリジナルとピッタリ重なるのだが、ブリッジやネックの位置がなんとなくずれている。まあそれなりのレプリカである。そしてまた悶々とする日が続いたのだった。

 しかし、人生努力していれば必ず報われる、と思えるようなことがあった。そう、本物レッドスペシャル(オールドレディー)のX線透過画像を見つけたのだ。なんでも鑑定団の鑑定家たちじゃ分からないだろうが、私にはこれが本物とすぐ分かった。泣いた、血圧が200になった、雄たけびを発した。今まではフライヤーさんが改修作業をしたときの写真を頼りにモデリングしたわけだが、X線写真を見ることで、「構造」がわかりフライヤーさんの改修時写真に写る細部の意味が理解できた。「ああ、これはこういうことだったのか・・・」と。この発見は私にとって大きなモチベーションアップになった。このX線写真をベースにした解析を第2次解析として、そのモデリングをモデリングver2とする。最近まで「新事実が分かったので新しく書きまーす」なんて調子のいいこと書いているが、実はこの第2次解析から早5年が過ぎてしまった。

●第2次解析へ





第3次解析(更なるフライヤーさん改修画像ベース)

 そして時は過ぎ2014年春、一応この「Burns改造」サイトを作ったことで数人のネット友人ができていた。その中の一人新潟のTさんから「フライヤーさんのサイトにお宝画像が出てますよ」と連絡をいただいた。行ってみると、「ああ気絶してもいいですか?」というような大量画像がアップされていた。マジで心拍・血圧が上がったのを感じた。どんな高級な料理よりおいしい画像群である。今回はばらされたパーツ自体も単品で写っている。ああ、やっぱりこうだったんだとか、なにこれ?とか。これをもとに解析したものを第3次解析とする。

 そしてモデリングをする、、、はずだった。そう、はずだった。しかしこの第3次解析でモデリングをしようと思っていた矢先、とある本が発売された。ということでどうせ新事実がたんまり出てくるだろうと想定し、第3次解析によるモデリングはスルーされたのだった、と言うと聞こえがいいが、大量の資料が頭の中で整理できないままになっていた。





第4次解析(レスぺ本-X線透過画および正面高解像写真ベース)

 そして真打ち登場は2014年10月。公式のレッドスペシャル解析本が発売された。表面薄板を貼る前の試行錯誤段階や、横方向からのX線透過写真などなどお宝画像満載である。実はこの解析本欲しいのだが、買うのを躊躇している。なぜかと言えば、いままでレッドスペシャルを自分なりに解析して楽しんでいたのだが、これが一発でドーンとばれちゃうことに一抹の寂しさを感じているからだ。まあそれでも買ってしまうのだろうけど・・・(後記:18年10月結局買いました)。この解析本の一部【横・斜め方向からのX線写真)とレスぺ本の公式サイトに掲載されていた正面からの高解像度な写真を反映したものが第4次解析である。

 しかしだ、年を取るごとに始めることが面倒になり、やりたいことが増え、寝る時間が早くなり、つまり自分のなかに理由を作って解析が延び延びになっていた。そう、一応理由はつく。第3次解析まではレスぺのシェイプはパンフ掲載の全体写真とX線画像しかなかった。この2枚だけが頼りだった。しかし一気にレスぺ本からの正面写真が3枚追加された。つまり計5枚の「素材」が目の前にある。これがすべてピッタリ合えば解析はサクサク進んだことだろう。しかし作業には「試練」がないとその反力である「達成感」も得られないがのごとく、この5枚の画像は微妙にシェイプが違うのである。それを写真の撮影手法に起因するのでは?と考え、また余計な解析ページを作ったりして、延々と終わらないループになっている。

 そしてこの悶々としている状態が、第4次解析である。第4次解析によるモデリングは実際行っていないが、何となくボディーシェイプに影響のないネック、特にヘッド裏の「コブ」のモデリングしてみた。これ結構大変だったけどできてみるとなかなか楽しい作業だったぞ。





第5次解析(レスぺ本+Guytonページ+・・・)

 X線写真がレスぺ解析では超重要な位置を占めているのはすでにお分かりかと思う。実はレスぺX線写真には同じ写真の階調を変えたものが2枚存在する。1枚は比較的早い時期(第2次解析時)に流出したもの。実はこれがレスぺ本のオリジナル画像かと思う。そしてレスぺ本発売に合わせて、出版元から開示されたX線写真がある。これは見栄え良くするためにコントラストを強めている。これによって見えなくなった部位もあるのだが、実は見えやすくなった部位があった。

 そこは「ナイフエッジ下」のたぶんコア材となっているオークの分割跡のように見えた。これが契機になってとある超ド級マニアの方と知り合いになり、連夜レスぺ謎を追及しあっている。この謎追及をする際に、やっぱりレスぺ本がないと話にならないことがわかり、ついにポチッとやった。

 第5次解析はレスぺ本の内容から判明した事実と、公式レスぺレプリカであるGuytonが開示したレスぺ画像、そして過去から収集した画像などを使って、いい年のオッサンたちが(すみません○○○ーさん)夜な夜なメールで、自分たちが過去から理解した内容をぶつけ、解析しあっている。やはり一人じゃない、ということは強みであり、自分の目というかそれを認識する脳が惑わされていた事実を感じないわけにはいかない。

 逃げていた正面写真からのシェイプ割り出しも、土日はそれこそPCにへばりついて解析番長になっている(ちなみに娘からは「お父さんって”〜番長”って好きだよね」と言われているが、確かに良く使うな・・・)。逃げないでひたすら対峙すると、やればやっただけいろいろな事実も分かってきて、逃げてはいけない!ということに気づかされるのである。そう、俺はもう逃げない!

 そして第5次解析の成果はモデリングVer3としてカタチに(3DCAD上で)するぞ。2018年はレスぺ解析集大成年としよう。





以下は備忘録なので特に見る必要ないです



■■■ 第1次解析から2次解析での変更点 ■■■

●ボディー形状
・SWプレートのボディー側「座」は別パーツであると結論つけた。
・ボディー全体がフレーム構造に近いことが判明した。
・ボディーフレーム2層は木ネジで締結されていることが分かった。
・フレームの重要部分にはオークコアが使われていることが分かった。
・SWプレート中央側のボディー表板が片持ち形状になっていて、その支えパーツが追加されていることが分かった。
・ボトムプレート下部にパッチ的表面処理があった。
・トレモロスプリング用のアクセスホールのつくりが違った(トレモロチャンバーがこんなに広いとは)。

●ネック関連
・ヘッドの折れ角位置他、形状が判明した。
・トラスロッド埋め込み方向が分かった。
・トラスロッドカバーの固定法が分かった。

●トレモロ部
・トレモロ用ボルト固定方法が違った<。
・アームベース形状が違った。
・アーム形状を3次元曲げに変更した。

●その他
・ブリッジ下のピックガードは分離されていることが分かった。
・スライドスイッチ足が横広がりタイプということが分かった。
・SWプレート上のスライドスイッチの配置がプレート上置きと分かった。
・PUワイヤ中継用ピンがあった。


■■■ 第2次解析から3次解析での変更点 ■■■

●ブリッジ周辺
・ブリッジ下には「6BA hank rivet nuts」(こんな部品見たことない)なる部品があった
・上記nut形状による隙間部位を樹脂で固めている

●PU下座繰り
・異型な座繰りの意味判明
 -初期型PU(に合わせた座繰り)をトライソニックに換装したため、座繰り形状が二重になっている
・座繰り部ナットの意味判明
 -初期型PUは出力を接触型で行っていたらしく、接触部位に金属パーツがありそこからワイヤが引かれている

●PUサラウンドの必要性判明
・PUサラウンドは初期PUとのトライソニックPU位置ずれのため拡大した隙間を隠す意味でやむなくつけた部品であることが判明
・ブリッジ側PUサラウンドのブリッジとPUの間は隙間になっている(中が見える)
・PUサラウンドの厚さは2mmより薄い模様(1.6mmくらいか?)

●ピックガード
・ブリッジPU部分だけ、PUフックねじ留め部が四角形状に切欠きあり
・旧大型PU設置していたため、現在の小型TriSonic換装で隙間あり

●PU(トライソニック)
・共通形状
 -PUはポールピースが無く2つの長方形マグネット+コイルといったシンプルなもの
 -各PUのねじ止め用ツバの穴は長穴形状
 -各PUからのワイヤ出力はベースプレートに2つの孔をあけ独立して出している
 -PUの6丸孔から見えた黒のドット模様はマグネットに貼られた黒の「養生テープ」であった
・ブリッジPU
 -PUベースプレートに○穴が開いている
 -ブリッジPUは高さを稼ぐため取り付け部ツバを曲げなおし
 -ブリッジ/ミドルPUのベースプレート自体にプレスでねじ止め用フックを作っている
・ネックPU
 -金属ベースプレートがない?(ねじ止め用ツバは金属ケースから出ている?
 -ねじ止め用ツバ形状は角形(自作品を金属ケースに溶接?)

●トラスロッド
・トラスロッドフック部分形状変更(C形状ではなくO形状、径6mm⇒5mm)
・トラスロッドフックボルト径変更(M10⇒M9)

●ネック
・ネックフレットボード貼面高さを2mm高く〜サイド写真でのPG痕から推測
・トラスロッド挿入時に出来た引き痕(ひっかけ部位+ロッド棒部分)
・トラスロッド座繰り形状変更

●スライドSW形状変更
・端子保持基板形状変更(大型化)

●トレモロユニット部
・ボディー開口部形状変更(新写真参考)
 -左右のリップ
 -下のスクリュー留め部のシャープ化
・アームベース(アームアンカー?)周りの深さ関係寸法修正(スプリング逃げ)
・ナイフエッジ留めスクリュー位置/サイズ変更(昔の検討時写真から/ネック留めスクリューと合致した)
・リアストラップピン位置変更
・ノブの固定用のサイド孔追加
・PG形状変更
 -PU部開口形状は旧PUベースで描画しなおし


■■■ 第3次解析から4次解析での変更点 ■■■

●SWプレートの形状変更
・折れ形状が詳しくわかった

●トレモロカバー
・ねじ1点留めであるが、表面薄板に直接ねじ留めしているのではなく、薄板裏(内部)側にナットが仕込んである模様
・よってねじも木ねじから一般的なねじに変更

●ボディー/木材
・表面はやっぱりマホ突き板貼り
・表面薄板3mmの材は木目横配置?
・ツキ板を0.5mm(実際は0.6?)としてボディーの全厚を39⇒40に修正
・上側インナーコアの形状変更
 ⇒前はリアPUの真ん中で分割していたが、いくら写真を見ても分割しているように見えないため、分割部はブリッジ下までとした
・ボディーインナーのライン修正
・ネックPU右側(向かって)ねじ留め座部分の木材は後付別ピース
・ナイフエッジ固定用ナットの場所確保(リアパネル)

●トレモロ部
・トレモロスプリング用座繰り追加(実際は当たらないのになぜ?)
・スプリング固定用ボルトの径がなんとなく分からないM5?M6?インチ系?
・スプリング固定用のアンカー形状が分からない(X線では金属なナイフエッジで隠れてしまう)
 ⇒横からのX線写真で少し進展

●ナイフエッジ
・ナイフエッジの固定方法が大きく変わった
・ネック側は木ねじ2本
・ブリッジ側はボルト3本がリアパネル付近まで伸び、座金(コイン?)+ナット留め


■■■ 第4次解析から5次解析での変更点 ■■■

●ボディー構造
・今まで表面に3mmのオークを貼ってあると思ったが、表面3mmプレートはブロックボードを広範囲に座グリで作っていた。
・表面べニアは0.5mmマホ突板とする。
・下ブロックボードに真円のくりぬき2か所あり。
・PU座グリ部の木目方向の意味判明した(ブロックボードであることとレスぺ本により)。
・各PU間ピッチは等間隔ではなくミドル-ブリッジPUのほうが1mm長いか?
●トレモロ部
・ナイフエッジは表面マホ突板下すぐとした。
・潜水艦部品活用の名残な掘り込みを確認
・トレモロスプリング避け座グリ部のC面加工のようなものは、上記初期座グリの名残だった

●ブリッジ寸法 ・ブリッジの弦間ピッチは、Burns搭載のTriSonicの穴ピッチ、およびBurns搭載のブリッジと同じ10mmとしていたが、どうやら違うっぽい(レスぺ本に回答有り10.3mm)
・1弦用/6弦用各ブリッジはシンメトリーではない(幅が違う)
・ブリッジ部高さ2mm下げ

●ネック
・ネック仕込み角は1度とした。
・ネックボディー埋め込み部幅は53mmであった。
・フィンガーボードはネジ留め併用されていた。
・旧PU用の接点は6BAハンクナットを利用していた。





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