裏通りを選んだのは正解だったと思う。あまり沖縄感はないが、というか沖縄感をほとんど感じない道を走ること10分程度。何やら珍しい畑があった。電球がぶら下がっている。何か生育調整をしている感じである。後になって調べたら、沖縄は「菊」の生産地としては有名らしい。その後あちこちでこの電球畑と見かけた。
しかし宿外での負傷で、左手の指が3本使い物にならない。まあ左手なので後輪ブレーキだからそれほど危険ではないが、ハンドルを握る左手はほぼ小指だけでブレーキをかける感じである。誤ってほかの指を曲げた日にゃあ、激痛で雄たけびをあげてしまうのだ。くっそー
さらに10分程度走ると何やらそそる感じの史跡はこっちみたいな看板があった。すごく小さな看板だけど、なんとなくそそられた。それは「イチグスク墓」。本当に小さい看板だけど、そういうローカルな史跡は面白い。チャリにつけているスマホのマップで見てもすぐのところなので、とりあえず行ってみよう。前日までの台風の影響で砂利土道はいたるところで大池になっている。まあサンダルなんで濡れるのは苦ではない。ジャンジャン池を走る。そして1分ちょっと行くとおもむろに看板があってここが入り口なようだ。
1年に10人くらいしか来ないんじゃないか?という小道を行くと、その先に目指す史跡があった。岩壁に作られたお墓である。誰もいないと少し不気味でもある。
さてどうしよう。このまま計画通り瀬底島に向かいたいところだが、実は一つ計画があった。この日が期限な沖縄クーポン3000円がある。これを美ら海水族館そばのレストランで行使するというものである。できるだけお昼前に入って混雑を避けたい。なので、あまり寄り道もできない。だけど、虫の知らせが「ここでそのまま瀬底に行くではない、このけものみちをもう少し進みなさい」と告げていた。確かに少し行くと海に出る。まあ少し先だから見るだけ見てみるか、と今度はサトウキビ畑の中をチャリで進む。すると防波堤のようなコンクリが見えた。
自転車を停め、防波堤から見ると思わず「うわぉーーーー!」と声がでた。誰もいない海岸である。引き潮なので浜が広い。決して真っ白な珊瑚礁の浜というわけじゃないが、なぜか趣がある。というか、誰もいないのがいい。川が流れ込んでいるので、プチマングローブっぽいのがある。関東ならお金をとれるような、えぐられた岩があちこちにある。こりゃーすごいぞ。俺一人の浜である。「俺浜」と名付けた。実は「俺浜」は宿から見た対岸なのであった。つまり入り江をぐるーーっと回ってきた感じ。10キロのリュックを下ろし、誰も来ないだろうという想定の下、鍵もかけずに浜に降りた。
こんな俺浜の独占、いったい何をしたらいいのだろう?と途方に暮れた。なんでもできる。選択肢が多いことほど、悩ましいことはない。「決める」ということは意外に大変なことなのだ。
とりあえず、まず流れ込んでくる川を進んだ。やっぱりサンダルはいい。水に入るのが苦にならない。川が自然と作った砂の形を、足跡で崩すのに少し心が痛んだが、どうせ数日すれば足跡なんてすぐに消え去ってしまうから、気にせず進むことにした。しかし自然にできた砂の形は美しい。いくらCADのスプラインで書いた曲線でも自然の曲線には叶わない。