■TOP > マクラーレン パドック潜入記

■■■ 第8話【グランドスタンド】 ■■■

 歩きながら会話だ、会話だ。

 俺のことを知っている人は分かっていると思うけど、沈黙が超苦手だ。これはホントのホント。沈黙が訪れると、何とか話題を見つけて会話が中断するのを防いでしまう。特に電話なんかで沈黙されるともうだめ、だめよだめよのダメダメダメ。 また、たまに上司にくっついて女性がたくさんいる店に行くのも疲れものだ。銀座当たりの高級クラブにでも行けば(行った事ないが)、もうプロのホステスさんだろうからお客の好みに合わせるスキルを持っているのであろうが、横浜辺りの店だともう

 「こんにちわぁ〜、○○でぇ〜す。私今週からこのバイト始めているのぉ。昼は専門学校行っているんだぁ」

 なんだか、こっちの方が彼女達に話題を合わせて、機嫌をとらなきゃならなくて大変疲れるのである。プロのサービス業たるもの、客の好みをいち早く見ぬき何とか会話を合わせるとか、自分自身の見聞を広めておくものじゃぁ、と憤慨してもしょうがない。

 特に俺などは、三種の神器スキー・ゴルフ・テニスなどはテニスを除いてやったことがないという、惨憺たるありさまだ。F1・模型・楽器・PC・写真(ちょっとご無沙汰)・庭師なんて言う、いかにも暗いところでちまちまやっていそうなものに凝っていると、多くの人とはなかなか話が合わなかったりするのだ。でも、はまったときには深く行きすぎるのね。

 ところでUさんはどんどん歩いていく。途中にあるいろいろなところを見たい誘惑を押さえてついていく。しかし、途中に展示してあった昨年型ベネトンマシンを見たときは「あっ、ちょっと待ってください。写真撮ります」と、思わず言ってしまった。

 また、こんな話をされるものだからもうへろへろ。

 「機会があったらパドックに入りましょう。しかしご存知の通り前マレーシアGPでのフェラーリの失格⇒一転失格取り消しの件があって、マクラーレンがピリピリしているんですよ。なんで、ガレージの中には入れないかもしれません。マレーシアで決まっていれば結構オープンに入れたんですがねぇ」と。
んでUさん、腰につけている帽子を取って

 「これいります?マクラーレンのパドックでもらってきました。何だか非売品みたいですね。ドライバーがかぶっているものと同じやつです。」

 もちろんもらった。んもう、これだけでも来た価値あるじゃない。(^o^) 確かに売っているものとは違うし、ハッキネンとかがインタビューを受けているときにかぶっているあれだ。うれし、うれしで、夢のよう。

 そんなこんなでグランドスタンドに到着だ。前回鈴鹿に来た時は2コーナー出口での観戦だった。2コーナーに行く途中にグランドスタンド入り口付近を通ったときに、隙間からちょびっとピットを見ることができ、たいそう感激したのだった。今回はずーっと見れるなんて・・・

 バスを降りてからここにつくまで結構暑くてヘロヘロになりかけていたが、グランドスタンドは風が流れて結構気持ち良い。そしてUさんに案内されて席に着いたとたん若い女性のスタッフがやってきて、「おはようございます、何時に出ていらっしゃたんですか?」。やはり招待客なのね、俺。なんかそんなに気を使ってもらって恐縮モンだ。

 さて、聞こえてくる聞こえてくる”ババババッ”っとインパクトレンチの音、”ウォーン、フォーン”やら”ファン・ファン・ファン・ファン”とエンジンをふかす音。舞い上がっちゃうねぇ。

そこで、フラッシュビームを出して”シュワンシュワンシュワンシュワン”とウルトラマンに変身するハヤタ隊員のように、ウルトラマンならぬ、カメラマンに変身した俺であった。



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