■TOP > Burns Red Special大改造 > アームを曲げる

■■■ アームを作る ■■■

 トレモロのその基礎となる稼動部分は完成した。今回はそのトレモロユニットを動かす「アーム」部の作成を行なおう。

 実はこのアーム部の作成、結果から言えばすんなりいったようにみえるが、実際は山あり谷ありであった。今回作成するのは

・アーム
・アームキャップ
・アームスリーブ

の3点である。


■■ アーム素材入手 ■■■

 レッドスペシャルはアームも特異な形状をしている。よってストラトのアームを使うわけにはいかない。それなら作るしかない。

 何かの記事でアームは毛糸の編み棒で作ったと読んだ。確かに30cmくらいの編み棒って言えば、昔はそんなものがあったようにも思えてくるのだ。と言うことで、まずは編み棒を探しに街にでた。ユザワヤや手芸ショップなどを回るのはちょっと恥ずかしい。そんなときは娘をダシに使って回ればいいのだ。でもやっぱりない!

 やはり金属の編み棒などない。探せばあるのかもしれないけど、ある感触を全く得られないので、この際違う方法を試すことにした。つまり金属棒とキャップは別々に調達することにしよう。キャップなんか樹脂に5mの穴をあけ、ドリルでくわえて回しながらヤスればあっという間に出来上がりだ。

 まずはホームセンターに行ってみよう。金属棒は結構いろいろあるぞ。けどなんかやわい。曲げやすさ(にくさ)を示す「曲げ剛性」はヤング率と断面2次モーメントの積で計算できる。断面2次モーメントはφ5mmの丸断面ってことから一意的に決まるものであり、今回はヤング率を調べてみればよい。

●ヤング率[GPa]
・アルミ:70
・真鍮:101
・ステンレス:200
・鉄:210

 当然アルミと真鍮は鉄系にくらべ曲がりやすい。触ってみてもやわやわである。それに表面仕上げもアーム材っぽくない。やはりアームはめっきしてないと・・・。ステンレスは剛性はあるがやはり表面性がよくない。鉄めっきなんていう棒材は売っていない。う〜ん、どうしよう・・・と、何度もホームセンターに通い、毎回踏ん切りがつかず帰って来る日が続いた。


【図1】いい感じな長さでもある。金ノコで余計な場所を切ったところ。

 そんな悶々とした日々から脱したのは100円ショップであった。安価にいくのがプロジェクトの骨子であるため、素材を探しに100円ショップにいくことが多い。でも視点を変えると見えるものも変わってくるのだ。そして見つけたのが「フック」である。5mmの棒径といい、長さといい、非常にいい感じだ。でも一点、やっぱり表面がめっきでないのだ。でもひとつの方向性が見えた。

 そのままフックを探す旅に出たら「カインズ資材館」で最強なフックを見つけた。5mm径、30cm長、シルバーめっき、まさにこれである!価格も198円だ。ビバ、カインズ資材館。






■■ 曲がり角度 ■■■

 レッドスペシャルのアームは複雑な曲がり方をしている。まずはこの曲がり方を模すのであるが、これには型紙に相当する立体型紙を作ることにした。程よく曲げられ、かつ直線が維持できるようなもの・・・思いついたのは園芸用の支柱であった。1.5mmくらいのものがちょうど使いやすい。大雨の夜、わざわざ庭に出て持ってきた支柱は、まさに立体型紙にちょうどいいものであった。こう、思ったことがジャストで決まるのが、安価にいく工作の醍醐味である。

 オールドレディーの写真を穴の開くほど眺めながら、適当に(話のつじつまあってないぞ)曲げで作ったのが以下の立体型紙である。この型紙をベースにアームを曲げていこう。

 まずは立体型紙を伸ばした長さでフックを切る。運良くちょうどアームが2本取れるくらい、真ん中で切断できたのがうれしかった(すごい貧乏性な俺)。

 さて立体型紙に習い曲げていくわけだが、万力にくわえて「エイヤっ」と曲げていく。全部曲げ終わって気がついたが、曲げるときは短い方(今回は根元に近いほう)をくわえ、長い側を持って曲げていくのがよろしい。今回は逆の方向で曲げてしまったため、最後は30mmくらいの側を持って曲がたが大変苦労した。もうあんな苦労はしたくない・・・

 アームキャップをサクッと挿すと、あら不思議。とってもいい感じになってたぞ。


【図2】立体型紙とともに。万力は25年前に買ったものだった。

【図3】出来上がったアームはとてもいい感じ。





■■ アームスリーブ ■■■

 この制作記は編集のからみで、実際の流れと合っていないのである。実際、一番最後に残ったパーツがこの「アームスリーブ」であった。なぜかと言えば、真鍮の旋盤加工とアームのロウづけのハードルが高かったからである。学校の宿題と同じで、嫌なことが最後に残ってしまうのは、小学校の頃から変わらないのである。

 このアームスリーブは相当な力がかかるため、樹脂で安易に代用ということができないのは明らかである。ならば意を決して金属加工をしよう。寸法はφ15mm高さ10mm、中心にM5のタップ、側面からφ5mmの孔があく(アーム棒)。材料は真鍮だ。

 そして最初のハードルは真鍮を入手するところから始まった。まずブロックの真鍮なら簡単に手に入るのだが、円筒で15mmというのモノがなかなか見つからない。弱気になって、アルミでもいいからあとから塗装で真鍮に化けさせるか?とか思っていた(下地をシルバー、上からクリアイエローを吹くとまさに真鍮っぽくなるのだ)。そうやって「考える行為」「自分の足で現場を見る行為」を続けると、さすがに神様もかわいそうに思ったのか、ある日女神様を見せてくれた。


【図4】いい感じな長さでもある。金ノコで余計な場所を切ったところ。

 ある日コーナンに行って、何気に金属もの素材のところに行くと、なんか真鍮棒が置いてある。それも太い、かつ短い、さらに安い。なんだ、これは三重苦ならぬ三重喜ではないか!と喜びながら詳細を確認した。すると、女神様を越えてマリア様(マリア様が女神以上なのかはさっぱり分からないし、かつ次元も間違っていると思われるが、もともと世界史とか日本史とかまったく弱い私には、それくらいしか例を挙げられないのである)が現れた。15mm径ジャストのものがあった、しかも100mmなんていい感じの短さで、さらに198円という想定より大幅に安い価格である。当然震える手で真鍮短棒を握り締めレジに向かった。



 流れ的にはすぐに加工に入るのだが、やはり金属加工はハードルが高く少し考える時間が必要だった。

・きれいに切られた端面と平行に切り出せるか?切り出し面がきれいにできるか
・棒径φ15と同軸度があったM5のタップを切れるか?(下孔をあけられるか?)
・アーム棒をロウ付けできるのか?

 考えても案が浮かばないし、本体のほうも完成一歩手前になっている。さあ行動のときだ。実際「切る」作業は好きじゃないのだが、そんなことも言ってられず、金ノコを手に取った。案の定、切断面は並行にはならないし、ガチガチしている。


【図5】相変わらず苦手な切り出し。

【図6】ああ、やっぱり汚い切り出し面。




 次はいよいよセンターに孔を開ける。旋盤なんて持っていないし、持っているのはドリルだけ。孔が垂直に立つかも怪しいのであった。そんなとき実家に言ったら、年をとった父から「もうボール盤使わないからもっていっていいよ」と言われ、喜んでもらってきた。これで垂直はばっちりだ。しかし外径との同軸を合わせるすべはなく、まあガンガン回転させて使うものでもないので多少同軸が出ていなくてもよしとした。でボール盤で加工だ。固定できないので危ないのは承知の上で手でワークを押さえる。当然切削抵抗がすごいので、発熱がすごく、すぐ手で押さえていられないくらい熱くなるのだ。切削油をジャバジャバかけられるわけでないので、軽くオイルをたらすのが関の山である。


【図7】ボール盤っていいなぁいいなぁ。。

【図8】ああ、切りくずも「す・て・き」。




 以下が出来上がり。荒めのペーパーの上で端面をやすっていたら、なんとなくいい感じになったので、よしとしよう。真鍮は240番くらいでさくさくいけるね。次はM5のタップを切る。これも以前コーナンで見つけて買っておいた、タップ&ダイスセットが役に立った。というか、これを見越して買っておいたということもある。でもダイスを使うシーンはあまり浮かばないなぁ。ストラトのアームでも作れば使うかもしれないけど・・・


【図9】まあ、これくらいでいいだろう。裏に来るのであれば見えないし・・・

【図10】タップを切る。万力にはさめばまず問題なし。




 次に上面にRをつけよう。これもすでにタップが切ってあるため、部品をボルトにねじ込みそのボルトをボール盤でくわえれば楽チンである。やすりで簡単にRをつけたあと、表面は400番のペーパーを当てると、一皮向けて真鍮のピカピカな素材色が出てきた。金属の色ってうっとりしますなぁ。


【図11】ピカピカよ。

【図12】ああ、幸せな色。。





【図11】なんかいい感じ。

 そしてアーム棒が刺さる横孔もあけて出来上がりである。でもこれからが大変なのであった。





 さて次はアームをφ5mmの孔にささなくてはならない。結構な力がかかるところなので、がっちり挿さないといけない。ガンガンやって、様子をみたが、すぐにぐらぐらしてしまった。ならば、焼きバメをしてみようと思い立った。こてで十分熱して(熱したのは横孔)ほどいいくらいのときにアームを挿したが、ダメだった。どーにもこーにもなので、やっぱりロウ付けか?と半ばあきらめかけていたとき、最後の一手を打った。

 アーム側の刺さり口を少し面をとって、ガンガン押し付けた。これが良かったらしく、今のところ問題なくアームできている。なんとかなるもんだ!


【図14】焼きバメにトライ。

【図15】結局力づくで押し込んだ。





←前のトピックへ ↑ 目次へ 次のトピックへ→