■TOP > ジャンクギター再生工房 > ZO-3 Red Special

■■■ ZO-3 concept Red Special ■■■



■■■ ことの発端 ■■■

 ひょんなことからZO-3内蔵型最強ディストーションが完成しちゃって、ZO-3っていうかエレキギター熱が再発して、でも同じZO-3だとつまらなくて、でも私ならやっぱりレッドスペシャルよね、大改造は人間の根源的な「チャレンジ精神」を刺激するよね、と誰もがここにいたることが容易に想像できる「ZO-3 Red Special」企画が発動した。

 「企画」っていったって別に会社じゃないんだから勝手に好きなことをやればいいだけであって、散歩しながら、通勤で駅まで歩きながら、布団に入って寝るまで(超短いけど)は、頭の中はZO-3レッドスペシャルの構成ばかり考えていた。そしてZO-3の域を越え、SP内蔵レッドスペシャルまでもが「脳内」で企画された。今回の改造はアンプSP内蔵レッドスペシャル(微妙に言い方が変わったりしている)の第一弾である。コンセプトは「ZO-3をなるべく生かしながらレッドスペシャルのテイストを限りなく盛り込もう」である。当然見栄え重視で、コストダウンできるところは躊躇なく取り入れるのである。

 そして今回のZO-3レッドスペシャル化は今までの塗装だけでできちゃうフランケン化とは根本的に違い、構造にたくさん手を入れたり、フレットはずさないで指板塗装したり、トライソニックに見栄えを化けさせたり、あれこれと実験的要素を盛り込んでいる。さてどんなものが完成することやら。





■■■ ベースモデル ■■■

 ベースモデルはZO-3 8号機イエローモデルである。指板が茶色っぽくて品が無くてボディーに傷が多くて、まあ何をやっても後悔をしない個体である。塗装はキャンディーカラーで木目を見せたシースルー塗装としたいが、ZO-3ボディーは合板なんで木目なんてまあないも同然である。レッドスペシャルよろしくマホガニーの「突板」を貼るって作戦(実は2号機はそういう構想である)もあるが、まずは手軽に作ってみたかったので、黄色の上から白コートし、その上に赤塗装とすることにした。さらにネックも全体的な赤塗装が必要なので、直接木目塗装するネック裏と下地トーンを合わせるためにヘッドのイエロー塗装も例のごとくはがしておくのだ。


【図1】2011年に購入。結構ギターにシールを貼っている人って多いのである。

【図2】マッチドカラーのヘッド塗装を落とすのだ。これはもう定番の処理である。あまりいい感じの木目じゃなかった。



【図3】スピーカーハウス内に基板のないタイプである。非常に「すっきり」だ。LEDの配線経路に落とし込みガイドがあるタイプ。

【図4】ブリッジをはずしたらサビサビ。普通はげんなりするが、ブリッジは使わないし塗装は落とすし、何の問題もありません。



【図5】保有する11台のZO-3の中でもこの機体だけはボリュームスペースにアンプ基板が仕込んであるタイプだ

【図6】ボリュームとスイッチが基板に直付けされている、理にかなった設計だな





■■■ 改造骨子・部品リスト ■■■

 改造骨子は以下のとおりである。

  ●指板は黒に塗装する
  ●トレモロユニットはBurns改造で考案した構造をほぼ利用
  ●PUはあまっているストラトのPUを利用(見栄えをTry Sonicに似せるためカバーを作成)
  ●フェイズアウトサウンドを再現するため、2PUとする
  ●006P(9V)電池をやめ、単3×6本とする
  ●ペグノブややっぱりシャラー型白じゃなきゃ

 一応、ZO-3の部品をそのまま使うもの、新部品として買ってくるもの、作るものに分けてみる。相変わらず「新規部品作成」は楽しそうな香をぷんぷんさせてくれるぞ。しかしひとつだけ断念したことがある。それは表裏のバインダー。レッドスペシャルはバインダーがいい味出しているが、普通のZO-3はエッジがR5ほどあり、バインダーを後づけできるような感じがしない。ZO-3 8号機(ZO3GF⇒ここ参照)ならできるけどちょっとこれはこれでとっておきたいし・・・





■■■ ZO-3のボディー形状 ■■■

 実は昔むかし、ZO-3フランケン1号機である黒白フランケンコンセプトモデルを作ったときの話。ピックガードは新規に作らなければならず、そのためZO-3のシェイプを測って3Dモデリングした。そしてあとにジェフベックコンセプトモデルでアイボリーストラト風ZO-3を作ったときも、ピックガードが必要だった。たくさんのZO-3をゲットしてわかったことは、ZO-3の形状や加工方法といった工業的仕様は、モノによって微妙とは言えないほど違うっていうことである。フェルナンデスは大まかな形状と仕様を開示して、あとは生産工場で作りやすいように図面弾いてよ、的にやっているのだろうか?どうもちゃんとした量産に慣れたわれら工業製品メーカーには理解ができない。まあいうところ、ZO-3の共通図面が書けないのである。

 なので持っているZO-3各々のボディー外形に合わせて、レッドスペシャルの特徴的なパーツ群(ピックガード、トレモロカバー)、またZO-3のスピーカーエスカッション、ネックポケットなどを配置するしかなさそうだ。いわゆる一品料理だね。なんだかめんどー!

 とうことで、まずは昔描いたCAD図にレッドスペシャル用の@PGライン Aネックポケット BSPライン CPU座グリ Dスイッチプレートポケット Eトレモロユニットポケット、などを書き込み、印刷しハサミで切り込みボディーに当ててみる。するとやっぱり細部は合わなくて、それを2度3度繰り返して、やっと形状が決まった。実際には今回の8号機は黒白フランケンの時のものより、ボディー幅工法で5mm強ほど太っていた。この違いは大きいんだなぁ。


【図7】まず印刷した型紙を当ててみると「えっ?こんなに違うの?」と驚くことになる

【図8】各部位をどれだけどの方向にずらせばよいかを詳細に調べていくが、一度だけじゃだめで何度か繰り返すのである。地道な作業なのだ






■■■ ボディーの加工 ■■■

 まずSWプレート、PU、トレモロユニット、新バッテリーボックスが収まる座グリのためテンプレートを作るところから始める。しかしテンプレートを作るには、実物ZO-3の寸法でモデリングしたうえで、部品配置などを決め、そして掘り込み位置を決めなくてはならないから、結局3Dモデリング化は早い段階で完成させる必要があるのだ。

 ボディーをトリマーを使いきれいに掘り込むためにはまずテンプレートがないと無理である。もう何10年前にドイトの特価品で買ったアクリルプレートがちょうどいい大きさで役に立った。こういうものを捨てずに持っているといつの日にか役に立つと思うと、捨てられないちゃんになってしまうのである。


【図9】やっと日の目をみた25年前のアクリル板。

【図10】何度もテンプレートを置いて確かめるの図。



 PUが収まる部分はもともとハムPU向けに座グってある形状をほんの少し広げるくらいなので楽ちん。SWプレート部は何にもない部分を20mmほど削り込んでいくのでちょっと大変。でも途中からは、もともとついているバッテリーボックス用の空間にぶつかるのでちょっと楽。そしてトレモロユニットが収まる部分は、40mmほど削り込むため結構大変なのだ。そして裏側には深さ15mmで新バッテリーボックス用の広大な面積を削り込みとなる。これらを削り込むと、大量のおがくずが出るのと、ZO-3ボディーが結構スカスカになってしまうのは結構衝撃である。


【図11】愛器のボッシュトリマでがーっと削る。PUポケットはもともと削られていたところを少し削るくらいなのでまあ楽。

【図12】トレモロチャンバーは40mmも削り込むので大変だ。最後の削りは寸法を測りながら慎重に深さだしをするのだ



【図13】こちらはSWプレート部。まず中央部に歯を入れて、そこから外周に行く過程がわかると思う。

【図14】一度に削る厚さは5mm程度が限界である。それにしても削りの爆音と摩擦熱とおがくずの量は半端じゃない。やわらかい集成材とはいえ、摩擦熱はすごいものでエンドミルに触ると簡単に火傷してしまう。



【図15】一応表側の完成。きれいに削れるとちょっとうれしい。一応L型ナイフエッジが収まるところはアンダーカットしてある。

【図16】裏。今回はトレモロを新しく作るのでZO3の弦を留める部品は必要ない。この金属部品はネジをかませて引っこ抜くのであるが、てこの原理を使うと簡単に抜けるぞ。



【図17】きれいに抜けた

【図18】ここはパテで埋めておく



【図19】裏側の大きな加工は電池ボックスエリア作成になる。

【図20】面積が広いところを手動で削っていくので、「島」が残ってしまうのである。おがくずとトリマベースが邪魔でなかなか見えないので、なんども止めて確認しながらの作業だ。やっぱりこういうのもNCですぱっと行きたいなぁ。



【図21】きれいにに削れた。

【図22】その後もう一周広いエリアを2mmだけ落として、ふたがはまるスペースを作る






■■■ ボディー塗装 ■■■

 ちょっとお高めの赤スプレーを買ってみた。赤はスプレーによって結構色味が違うので、いろいろ買ってみて自分で色味を確かめるしかない。試し吹きをしてみたら、結構鮮やかな「赤」であった。うむ、これこそフランケンに利用するのがよいな!と思ったが、まあレッドスペシャルもこの赤にしてみよっと、今更あれこれ思案するのが面倒な自分がいた。

 赤を吹くときには下地を白ピンク系でちゃんと作っておかないと、きれいな赤にはならない。まず安い白スプレーを下地に吹く。次に例の赤。そしてクリアーコートである。

 楽器関連のスプレーは宅内で行うのは無理であって庭で吹いているのだが、夏は「虫」に気をつけなくてはならない。我が家の庭は「蚊」の天国であり、今回も塗装中に蚊がZO-3にくっついた。ああなんてこった。しかし蚊の嗅覚はすごい。長袖長ズボンで武装していても、裸足にサンダルだった足の甲やら首筋やら、確実の攻撃対象を見極めそこを的確についてくる。夏場のギター塗装は命がけである。


【図23】ピックガードが大半を占めるので隠れるところをきれいに塗っても・・・という思いもあるのだが、まあその辺は変に几帳面な自分がいるのであった。

【図24】裏もきれいに塗装できたが、クリアーをかけっぱなしである。本来研ぎ出しをしなければならないが、今回は実験だから・・・と(また言ってる!)






■■■ ネック塗装 ■■■


【図25】写真だとキャンディーカラーっぽさがあまりわからないね。

 ボディーは白下地の上に赤を吹いたからわからなかったが、今回の赤スプレーを直接ネックの木目部に吹いてみると、この赤意外に隠ぺい力が弱いことが判明。キャンディーカラー(下が透けて見えるシースルー塗装)に近いかもしれない。なので、逆に薄めに吹いて木目を生かす方向に変更だ。レッドスペシャルならマホガニー木目がいいのだが、まあそうも言ってられないから良しとしよう。





■■■ 指板塗装 ■■■

 レッドスペシャルの意匠的特徴は多々あるが、そのうちの一つに指板の黒グロス塗装がある。Burns改造のときはここで苦労した。最終的にはフレットを抜いて塗装したが、フレットを抜くことはギターとしてはあまりやっちゃいけないことだと悟った。なので今回は、フレットとドットポジションをマスキングしてその上から @ウッドシーラー A黒塗装(ハンドピース) Bクリアー塗装 と攻めることにした。

 フレット部分のマスキングは意外に大変である。それを22本もあるフレット全部に施すわけで、忍耐力との勝負である。こういう単純作業は集中力が続かないなぁ。後半の作業はちょっと気合が抜けている感じである。この「抜けた気合」はフレットのマスキングをはがした時に発覚するものであり、一部フレット近傍がオーバーマスキングされていて(マスキングテープのカットが甘かった)塗装がされていないところがあったりした。まあ実験機だから・・・と自分を納得させるいい言い訳が用意されているわけである。

 ちなみに本物レッドスペシャルのドットポジションマーク、12フレットとか24フレットとかはドット同士のピッチがすごく狭い。これもレッドスペシャルの意匠なのであるが、Burnsはここを故意にか幅が逆に広すぎるのである。今度Burnsを改造する時は、一度ドットポジションマークを抜いて新しく穴をあけなおそうと思っている。安くベースBurnsが入手できるのがいつになるかわからないけど・・・


【図26】指板がだいぶ汚れていたんでクリーニングよりも一気にペーパーで落としてしまえ、となった。

【図27】フレットのクリーニングをした後、フレットに仮マスキングしていく(ドットポジションマークにもマスキング)



【図28】フレット幅に合わせてマスキングテープを切っていく。

【図29】全部切り終わったら、サンディングシーラーを筆塗りし、ペーパーがけをする。



【図30】一応丁寧に塗装するためハンドピースでやってみた。ハンドピースは少しずつ塗装できるので失敗が少ないのである。

【図31】はい、真っ黒ですね。この上からクリアーコーティングだ。





■■■ PU配置 ■■■

 ZO-3のCADと何時間にらめっこしたことだろう。どうやってもシングルPUは2個しか配置できない。レッドスペシャルな3個のPUを配置したいがあきらめざるを得ないのである。しかし2個あればムスタングと同じで、とりあえずフェイズアウトサウンド出せるので良しとしよう。

 PUは当然Tri Sonicを使うべきであるが、こんなZO-3のSPで鳴らすようなお遊びにあんなに高いPUは使えない。なので、その変にゴロゴロ転がっている、安物ストラトから外したPUを利用しよう。ストラトPUからケースを外して、それにTriSonicそっくりなフェイクケースをかぶせる。トライソニックらしい孔の中の黒(マグネット)は大好きなカーボンシートで再現してみよう。


【図32】ストラトのミドルPUとフロントPUをひっくり返して配置している。なるべくピッチを広くするための工夫だ。

【図33】中を黒く見せるために、薄シートにカーボンシールを貼った。カーボンいいよね。


 ZO-3ボディーは内部に結構なトンネル貫通穴が開いていたりして、そのままではレッドスペシャルのPUダイレクトマウントがちょっと難しい。なので今回はPU座グリ部分下に、PUベースプレートを設置した。合わせて高さ合わせのためにスペーサーをかませるようにした。このPU高さ合わせは思いのほか大変だったりするのだが、それは後ほど。

 2PUの設置ピッチはなるべく広く取りたいが、SPエスカッションへの干渉があり思いのほか近接せざるを得ない。レッドスペシャルの場合、PUサラウンドが意匠的に重要パーツとなっているが、今回このPU間距離だと小さなPUサラウンドとならざるを得ない。まあしょうがないね。


【図34】大腸検診のようにお尻(ジャック部)から20mmくらいの太いドリルで胃(スピーカーホール)まで一気に通路作っている。大胆だなぁ。なので、PUダイレクトマウントのためのベースプレートが必要だ。

【図35】まあPUサラウンドが小さくなるのいたしかたないのである。当然PUケースもメッキ加工できなかった。負けた!


 ストラトから外したPUコアはもともとのハムPU用の座グリを利用して配置するが、このPUコアにかぶせる「TriSonicもどきケース」はPUセンターにかぶせるのではなく、PU間ピッチが広がったよう偽造するためオフセットして取り付けることとした。TriSonicは幅広PUだからこそできる技である。

 そのTriSonicもどきケースであるが、TriSonicはメッキでピカピカになっているからこそ映えるのである。が個人ではメッキというハードルが高すぎる。いろいろ検討したが、今回は普通のシルバー塗装で逃げることにした。まあしょうがないのである。





■■■ スイッチプレート ■■■

 レッドスペシャルであるからにして、ストラトのようにピックガードにたくさんスクリューが見えるのは避けたい。レッドスペシャルに慣れるとストラトが下品に見えてくるのだ。

 さてそのスイッチプレートであるが、これに合うスライドSWを見つけるところから始めなくてはならない。今回は秋月のサイトでいいのを見つけたので買ってみた。秋月のサイトは部品はサイズが分かるのでネットで購入するのに助かるのである。一方秋葉原部品屋のもう一つ「千石」のサイトを見たらもっとよさげなのが見つかった。しかし千石のサイトでは寸法が分からない。う〜ん、SW買うためだけに秋葉に行くのは大変なので、入社以来頑張ってもらっている錦糸町在住小野寺君に買ってきてもらおう。そしてその千石のスイッチがもっともいい感じだった。まさにこれだ! しかし数量が足りない。しょうがないので夏のもっとも暑い日に丸の内であった仕事の帰りに秋葉原まで足を伸ばした。千石の店員に少し腹が立ったが、まあ思った以上のスライドスイッチがあって、ちょっとにんまりだ。

 さてこのスライドSW、ノブを白くしないとレッドスペシャル意匠のいいところを再現できないのである。Burns改造のときは6個のスイッチを並べてマスキングして面倒な塗装を行ったが、今回はスライドSW自体をばらしてみた。そうすると樹脂のノブ部分だけうまく外れて、そこだけ塗装をすればよい。これは楽だぞ。


【図36】買い集めてみたスライドスイッチ。左から秋月購入、千石黒ボディー、千石2ポジション、千石3ポジション、Burnsレスぺクラスのでかいの。千石で小型ツバ付きが入手できてよかったぁ・・・

【図37】スライドSWなんてばらしたことがないけど、板金のよわっちい爪で留めてあるだけなので、簡単にばらせてしまうのである。



【図38】スイッチをばらしてノブ部分だけ取り出せばマスキングなんてしなくて良いのである。ああ、楽。

【図39】ホワイトサーフェーサー、白塗装、クリアーコートが終わってまたスイッチ状態に組み付け終わったら、あらまあいい感じね、となった。


 そのスライドSWであるが、SWプレートにどうやって取り付けるか?が一つのテクの見せ所になる。Burns改造のときは、SWプレート表側にスライドSWのツバ形状で厚み分だけ座グリを掘った。しかし今回のスライドSWは案外つまみ部の背が高い。レッドスペシャルはピックガードから出ているスイッチノブ部分は意外に短いのだ。なのでスイッチは2mm厚SWプレートの裏側に設置し、表側からM2のネジで留めるといい感じになった。当然このM2ネジ頭を埋めるために薄頭ネジの採用とSWプレートのネジ頭部掘り込みも行っている。


【図40】スイッチツバ上面をSWプレート上面と面一にするために、ツバ厚みだけ掘り込んだタイプ(Burns改造と同じ)。SWは上からPGで抑えるのでネジ留めする必要がないけど、ツバのタップ部はバーリング加工してあるから、それを逃げるための丸穴をあけてある。

【図41】これが採用した構造だ。スイッチノブの背高が幸いし、ちょー普通うの取り付け方ができた。シンプルはいいね(複雑なのも好きだけど)。




 さて私のZO-3ディストーション改造の場合、2VOL構成としており、ディストーションVOLと音量VOLとなっている。ZO-3本来のパワートグルスイッチの孔をりようしてディストーションVOLを取り付けている。電源スイッチとしてのトグルスイッチを外す代わりに、「スイッチ付きVOL」を利用している。これだと特にZO-3に加工を施さなくても(実際はトグルSW用孔をほんの少し大きくする必要あるけど)取り付けられる。

 そのボリュームだが定常的に使っているのは秋月の60円/個のものである。このボリュームは思いのほかロッドが長い。楽器用のボリュームノブは短いシャフトに対応するものが多いので、このままでは利用できずシャフトの切断が必要だ。ボリュームのシャフトを切断する時は、本体側を押えてシャフトを切るとボリュームにガリが出てしまうので、絶対シャフトを加えて切らなければならない。


【図42】やっぱり各種抵抗値のボリュームって用意しておきたいのだ。たっぷり秋月に投資した。でも使うのって決まってくるのだけど・・・

【図43】左が秋月VOL、右田ストラトについていたボリューム。ネジ部が長いのが分かる。



【図44】どこを削ったらいいかをあらかじめマスキングする。

【図45】シャフトを加えて削るが、まあもともとローレットが切ってあるのもあって、まあ削りにくい。一番嫌な作業の一つだ。





 そしてスイッチとボリュームをつけたSWプレートは、いわゆるストラトのピックガードAssyみたいなものだ。ここまで来ると後はもう少し、って思えたが、まあこの後もいろいろと時間がかかった。


【図46】こんな配線。ボリュームやSW後のPU出力など、ディストーション基板に入るところはソケット化しておくのが私の流儀である。

【図47】こんな感じに納まっている、の図。透明アクリルのテスト用PGを乗せてみた。ボリューム場所を変更していたので、ちょっと追加工があるけど、まあまあいい感じである。





■■■ トレモロユニット ■■■

 レッドスペシャル化のハイライトはやはりトレモロユニットの作成であることは疑いの余地がない。ここもBurns改造のときの作戦が生きるのであるが、今回はいろいろと制約があって同じ形状とすることができなかった。

 ZO-3レッドスペシャルの場合、大きな意味でのトレモロ構造はBurns改造と同じである。アームベース(ストリングテールピース)とテンションスプリングが入るトレモロチャンバーを掘り込むのだが、今回はZO-3のボディー厚みを利用して、アームベースの深さ方向長をBurns改造の20mmから30mmへと拡大した。これはスプリングのばね乗数を小さいもので済ますためである。またレッドスペシャルのアームベースは左右どちらにもアームがつけられるような構造だが、盲腸のような無駄なスペースはあまりないので、今回は非対称な形状とした。


【図48】Burns改造はチャンバーボトムにプレート(ピンク)を敷いてL型ナイフエッジもどきにかかる回転モーメントを抑え込む構造だ。

【図49】ZO-3コンセプトRSは、L型ナイフエッジもどきを直接ボディーにねじ留めする構造だ。当初Burns改造もこの構造を優先していたが、簡単にプレートを置くだけの構造を思いついたのでそれでやっているのだ。




ナイフエッジ/アームベース支点

 ナイフエッジは当然レッドスペシャルと同一構造は無理で、上で説明したようにBurns改造と同じである。しかしBurns改造のようにL字アルミアングルを底面まで伸ばしストッパープレートで抑え込む構造は、チャンバーが深くなったため不可能であった。なので今回は、ナイフエッジLアングルに孔をあけ、直接ボディーにネジ留めしてみた。ドライバーが斜めでしか入らないため斜めネジ留めが気持ちよくないが、まあストラトのスプリングフックを留めているネジもそうだから「まあいいっか」である。気休め程度にLアングルに皿ねじ用のテーバーを切っておいた。しかし結果やっぱりネジでの固定ってしっかり感があっていいなぁ・・・と感じだ。何事もやってみなくちゃわからないものだ。

 ちなみにこのアルミLアングル、これって「チャネル」っていう名前がついているようだ。知らなかった。ホームセンターでそれっぽいのをいくつか買ってあるのだが、これもモノタロウで見たら、やたら種類があって、「いろいろな厚みやL長のモノで作って実際に試験しなきゃねぇ」と悪魔が囁いたため、よさげなやつをいくつか購入してある。長ものって結構邪魔なんだけど・・・


【図50】ナイフエッジになる部分は、所定の長さに切りだしナイフエッジっぽくヤスルのだが、これもあまり好きではない作業だ。ボール盤でボディーにネジ留めする孔をあける。

【図51】一応皿ネジのあたりがきつい方だけ少し面取っておこう。




アームベース


【図52】位置を決めて下穴4.5mmに5mmのタップを切る。

 本来は金属でがっしり作るべきであるが、そんな加工しはじめたら1週間徹夜しそうだったので、あっさり樹脂でやることにしている。これもBurnsで実験してまあ樹脂でも撚れなさそうなのを確認できたからである。トレモロアームが取りつくシャフトは、本家のレッドスペシャルは普通のシャフトのようだが、私の場合、ここは頭なしネジ(M5x60)でやることにしている。なのでアームベースにはこのネジを受けるタップを切っていく。ストラトのトレモロ構造の印象が強いので、「ここはタップ!」と刷り込まれているのかもしれない。う〜ん、先入観はいけないかも。






スプリング

 テンションスプリングであるが、最近はネットの威力で安価にいろいろな仕様のスプリングを購入できるのがうれしい。代表的なのがモノタロウだ。そこにある「東京発条の強力ばね」が、サイズやばね乗数の違いで多くのラインナップがありグーだ。でもこういうマトリクス的に種類があるものは、なんとなく「全部持っていたい」と思ってしまって、勢い表が全部埋められるがごとくそろえてしまう懲りない私なのである。でもこの「安心感」が欲しいんだよねぇ〜


【図53】径・長さ・ばね材など、マトリクスにすると結構な組み合わせになるが、欲しいときにすぐ欲しい、という安心感が欲しいのでこうなる。

【図54】とりあえず一番ばね乗数の弱い黄色タイプを入れてみたが実際には弱すぎて弦に負けた。ので真ん中のばね乗数な青タイプに変更した。




アーム棒SA

 さていつも何となく作りにくい感じがするアーム棒周りである。今回のZO-3改造はあくまでレッドスペシャル「コンセプト」なので、まったく同じ寸法でがっちり作る必要はないのであるが、やはり特徴ある部分はうま〜く処理してZO-3でありながらレッドスペシャルじゃん・・・としたい。


【図56】いつでも改造が始められるようにたくさん買ってあるのだが、まあ必要な時に買えばいい部品なのだ。いつもの買いだめっていう悪癖が出ている。

 まず棒の型紙(紙じゃないけど)として園芸用の太めのアルミワイヤでを利用する。3mmのアルミなんでスカスカ曲がるのを利用し、うまい具合に型を作るのだ。そしてそれに沿って5mmのメッキスチール棒を曲げていく。このメッキスチール棒も100均で購入したフックである。こういう安価な素材を転用するのが楽しくてしょうがないのはこの「勝った感」があるからである。しかし5mmのスチール棒はそれなりに硬い。なので万力でつかんで曲げるのだが、「グイッ」と静摩擦係数から動摩擦係数に摩擦力が下がるがごとく動いたら止めるまで連続でやるのが良しである。2度曲げや戻しなどできないと思ったほうがいい。つまり真剣勝負!である。さらにレッドスペシャルのアーム棒は2次元平面での曲りではなく3次元的な曲りである。これも難しさを増長しているぞ。


【図57】万力で挟んでフック部分を削り落とすのだが、のこぎり系はいつになっても嫌いな作業のトップである。

【図58】型紙をベースに曲げ終わったアーム。小さいボディーのZO-3に合わせて短めに作った。





【図59】真鍮ってすき!

 一方アーム棒を受ける真鍮の土台はレッドスペシャル意匠のなかで効き目のあるところだ。当然個々は力が相当にかかるので樹脂では無理である(実験済)。以前買っておいた15mmの真鍮棒を10mmの厚さで切りだし、中心に4.5mmの孔をあけそこを5mmのタップ切する。それが終わったら、頭無しの5mmのスクリューにねじ込み、上下をナットで抑えボール盤にくわえさせる。まわしながら上面のR付けをおこない、さらにペーパーを表面にあてればピカピカのアームスリーブの出来あがり。ああ、サイドに棒が刺さる5mmの孔をあけておかなければね。この辺りはBurns改造と同じなので写真を見たい方はこちらから。

 そしてアーム棒とアームスリーブの合体。これが前回のBurns改造で最後まで悩んだところだった。Burns改造のページを見てもらうとわかるが、最初は圧入、次は焼嵌め、その次はろう付け、それでもだめで最後に半田でトライした。結局半田に落ち着いたわけであるが、その過程であれこれやりすぎてアーム棒もアームスリーブももうボロボロ状態である。今回これを最初からスマートに半田でやることにした。さあどうなるか?

 アーム棒を真鍮スリーブに挿入し位置と角度を決め、このために買った100Wの特大半田ごてで接合部付近を熱する。1分秒ほど熱し半田をつけてみたら、あら意外や意外、きれいに半田が流れてくれるではないか。棒の根本を富士山すそ野型に半田で固定し冷ましたら、「おお完璧じゃんこれ!」と思わず笑みがこぼれすぎて顔が変わった。なんだよ、こんなにうまくできるのなら、高い金出してろう付け機材一式買わなくてもよかったじゃん、と後悔したことは明らかである。まあこれも経験であるから授業料だな。


【図60】本物のレッドスペシャルもこんな感じで溶接?半田?している。それにしてもこんなにうまくいくとはねぇ。われながら驚きだった。

【図61】こうやってサブアッシーになっていると酒の肴になるのである。いい感じ〜とにやにやするのは私だけである。




トレモロカバー


【図62】最初のテストはやっぱり透明アクリルで、ボディー掘り込みとのバランスを見ながら決めていくのだ。一度決まればあとは大量生産なのだ(そんな需要ないって)。

 トレモロカバーもデフォルメが必要である。なんせZO-3なんていうボディーが小さいものに無理やりいろいろな構造物を入れ込んでるからして、同じスケールでは成立しない。これも5枚くらい削ってやっと最終形となった。







■■■ ブリッジ ■■■

 ブリッジもレッドスペシャルの大きな特徴の一つだ。本物は各弦ごとに別ピースになっているが、面倒なので一体で作っている。各弦の高さ調整はできないが、散々試作して固定値を見つけている。本来は金属パーツであるべきで、本物レッドスペシャルもここでアースを取っている(下に銅箔テープ貼ってSWプレートに導いている)。しかし我が家のNCは金属加工がからっきしダメで、しょうがないので10mmのアクリル板から削り出している。「いろいろなアクリル版が10kg入って1800円」なんてのを落札しているんで、こういう時に結構役に立つのだ。見栄えだけだったら、グレーサーフェーサーとフラットシルバーの塗装でまあ本物アルミと見分けはつかないね。

 ローラーシャフトは1mm径の10mmシャフトが手元にあったのでこれを流用、ローラーの部分は弦のエンド(引っ掛かり部品)を流用している。


【図63】アクリル板端材1800円分だ。2mmから10mmまで入っていたぞ。

【図64】やっぱりレッドスペシャルのブリッジはメカメカしくて萌えるのであるよ。






■■■ ピックガード ■■■

 海外のサイトを見るとピックガードのことを「スクラッチプレート」って呼ぶことを学んだ。へぇ、誰がピックガードっていう日本語にしたんだろう?

 ZO-3の場合、ツノがあるレッドスペシャルとは形状が似てもぬつかぬため、ビックガードはどうやったって「雰囲気」を出す程度にしかならない。しかしこの「雰囲気」をどう出せるか?が腕の見せ所である。ちなみにブリッジの下だけはピックガードが別パーツになっている。これは配線とか中をいじるときにブリッジまで外さずにピックガードだけ外せばいいようにするためだ。まあこの部分も「こだわり」で、同じように別パーツにしておく。確かにピックガードだけ外れると便利だし・・・

 レッドスペシャルのピックガード固定用のスクリューはストラトのものより1ランク小さいもののように見える。なので、ストラトのM2.6丸サラからM2の丸サラに変えてみた。長らく丸サラねじは楽器やの部品コーナーでバカ高いのしか買えなかったが、最近はやっぱりモノタロウで買えることが判明した。ガンガン利用してまっせ。


【図65】ビックガード研ぎ出し中

【図66】モノタロウでゲット。丸皿ってなかなか買えないのだ。


 ピックガードのエッジは45テーバーなのであるが、これをNCで削り込むとき楽チンで時間がかからない「外形加工」だけで仕上げると、下に削り進むにつけ横方向からの切削負荷が増えるため、摩擦熱でアクリル板が溶けるのである。ここは面倒でもテーパーがない形のピックガードモデルで一度垂直に削り落とし、そのあと外周部のみテーパーに削る2段階切削が必要だ。まあ何言ってるかわからないぜ!って人が大半だと思うけど、一応備忘録のためである。





■■■ 電池ボックス ■■■

 ZO-3で使っている006P電池は小型で電圧が高いけど、容量が圧倒的に少なくてあっという間に空になってしまう。なので前々から単3電池化を考えていた。ディストーション回路を作ったときにためしに利用したパワーアンプは、電源4Vくらいまでであれば何とかSPをドライブすることができることが確かめられ、単3×4本で行ける算段が付いた。しかし6本で行けるなら、アルカリ1.5Vであれば9V出るじゃん、エネループでも7.2V出るじゃん、これじゃんこれじゃん。と6本電池化に心は大きく傾いていた。

 さて単3が6本入る電池ボックスを探そうとこれもいつもの秋月サイトを見ると、ふた付きの6本電池ケースがあるではないか。これを勢い4ケース買ってみた。いつもなにげに多く買ってしまうのが私の悪い癖である。このふた付きケース、ちょっと体積的にみて不利感がありありであった。それにZO-3に配置しようと思うとどうしても既存の電池ボックスあたりに斜めに配置するしかなく、どうもすっきりしない。最初はこれいいよねいいよね、と言っていたのだが、そのうちちょっとでかいよね、いやだよね、となり、最後は違うの探そうっと、となった。


【図67】単3を6本配置だとこの置き方がスタンダードだと思うし、それ以外考えられなかった。思い込みとは恐ろしい。但しフタ付きがめちゃくちゃ魅力的である。

【図68】ただしZO-3に配置しようと思うとこんなふうに斜め配置でちょっと格好悪い・・・


 単3×6本ってのは、6本の電池が並列に並ぶタイプが一般的かと思ったが、実は秋月にはこのタイプのラインナップがない。あるのは、3本並列を2直列ってな感じの、ちょっと長めの電池ボックスである。しかしこの形状は当初あまり好きになれなかったのだが、見ているうちにだんだんよく思えてきた。小中学校の頃、なんとも思っていなかった女子が隣に座り、次第に心惹かれていくようなものである。もしくは最初に設計した構造をあとあとまで引きずってしまう心境かもしれない。いずれにせよこの変速6本タイプを利用することにした。


【図69】裏側にはシリーズ配線にするためのワイヤが斜めに走っている。これは出っ張りでもあるので、@このワイヤの部分だけZO-3ボディーを削り込む Aワイヤを切断して横に這わせなおす・・・当然楽チンなAを選択した。

【図70】こんな風に収まっている。まさにここにあるべきなようなぴったりな場所。


 しかしこの電池ボックスはあくまで電池ボックスだけでありふたがない。でも私にゃぁそんなの関係ない。2mmのアクリルを蓋にしてネジ留め、そしてフタが収まる部分を落とし込んでボディー裏面を面一にすることにした。ああ、いい塩梅ですな。





■■■ ディストーション回路 ■■■

 ZO-3が再び盛り上がってきたのがこのディストーション回路がうまくいったからである。エレキギターの大半は歪ませた音を出すのが目的であり、ペケペケ音しか出せないZO-3は価値半減どころではなく、価値ちょびっとなのである。回路自体はダイオードでクリップさせたものであるが、それなりに考えて乗数設定や可変ゲインといった回路としている。さらにディストーション回路と専用パワーアンプを同居させてももともとついているZO-3アンプより小さくできたので、どこにでもおさめられるのである。主要なパラメーター部品はソケットにして音の変化を楽しめるようにしてある(一度決めたらもう変えないことがほとんどだけど・・・)

 このディストーション回路アンプは、初期ZO-3のようにスピーカー横に置くと、ボリューム設置方向へのワイヤアクセスが多くなり非常に煩雑になる。なので今回はZO-3オリジナルの006Pバッテリーをやめこの部分にディストーション基板をおさめてみることにした。入れたら「おおピッタリじゃん」となってにんまりである。

 ディストーション関連に関しては専用のページを作った(作っている最中)ので詳しくはそちらを参考に。


【図71】モデラで削り終わったところ。

【図72】孔はあけてくれるしきれいだしでいうことなしである。これ1枚は5分程度で完成するぞ。



【図73】ZO-3のオリジナルアンプとの比較。何事も小さく作ることが社会人生活のDNAで刷り込まれているので、可能な限りピチピチに作りたい。でもチップ部品は扱いにくいので使わない。

【図74】ZO-3の電池ボックス部分にすっぽりと収まった。別に画策していたわけではないが、これほどぴったり納まるとはなにか運命を感じるぞ。




■■■ 祝い完成 ■■■



↑ 目次へ